サン=ジャック・ド・コンポステールへの道——現代のフランス人が「巡礼」をする理由
フランスから始まる「巡礼路(カミーノ)」は中世から続く宗教的な道だ。でも現代の巡礼者の多くは信仰のためではなく「何かを探して」歩く。この現象が示す現代フランス社会の精神的な空洞。
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毎年、フランスから何万人もの人がリュックを背負って南へ歩き始める。目的地はスペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラ——中世キリスト教の三大聖地の一つだ。
「カトリックの国フランスでは当然では?」と思うかもしれない。でも実際に歩いている人の多くは、特定の宗教的信仰を持っているわけではない。
カミーノとは何か
「カミーノ(Camino、道)」はサンティアゴ・デ・コンポステーラへの複数の巡礼路の総称だ。フランスからの代表的なルート「フランス人の道(Camino Francés)」はサン=ジャン=ピエ=ド=ポル(フランス・バスク地方)から始まり、ピレネー山脈を越えてスペインを800キロ歩く。
ル・ピュイ(Puy-en-Velay)から始まるフランス国内のルートも有名で、こちらはフランス版カミーノとして独自の文化を持つ。
なぜ現代人が歩くのか
カミーノの巡礼者統計によれば、21世紀以降に巡礼者数は急増している。スペイン巡礼者登録所のデータでは、2019年に約35万人が証明書(Compostela)を受け取った(その後コロナ禍で減少、回復傾向)。
国籍も動機も多様だ。「人生の岐路での決断を考えたかった」「病気回復後の感謝」「何かをリセットしたかった」「ただ歩きたかった」——信仰より実存的な動機が多い。
フランス社会は他のカトリック国と比べて世俗化が進んでいる。教会への礼拝者は減り続けているが、「意味を探す」という欲求は消えていない。カミーノはその代替的な「通過儀礼」として機能している側面がある。
実際に歩くためのヒント
フランス国内のルートは複数あり、全ルートを歩くと数週間〜1か月以上かかる。スペインのサンティアゴまで行く場合は一般的に1か月程度。
宿泊はアルベルゲ(巡礼者宿)が沿道に点在し、1泊10〜15ユーロ(約1630〜2445円)程度。シーズン(春・初夏・秋)は混み合うため早めの出発や予約が必要な場合がある。
日本からフランス・スペインを訪れる旅行者の中にも、数日〜数週間だけカミーノを歩く人が増えている。