パリの水道水が白い——石灰水(eau calcaire)と暮らす知恵
パリの水道水は石灰分が非常に多く、ケトルは白くなり髪はパサつく。硬水の原因、対策、浄水器の選び方を在仏生活の視点から解説します。
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パリに住んで1週間、ケトルの内側が白くなる。2週間で蛇口の周りに白い結晶がこびりつく。シャワーの後、髪がきしむ。犯人は石灰(calcaire)だ。
パリの水道水の硬度
パリの水道水の硬度は約250〜300mg/L(フランス式で25〜30°f)。日本の水道水が50〜100mg/L程度であることを考えると、約3〜5倍の硬さだ。これはパリの水源がセーヌ川とマルヌ川の石灰岩地層を通った地下水であることに起因する。
飲む分には問題ない。パリの水道水はEU基準に適合しており、安全性は担保されている。ただし味は日本の水道水とはっきり違う。お茶やコーヒーの味が変わるという声は在仏日本人の間で非常に多い。
石灰がもたらす日常の問題
家電への影響: ケトル、洗濯機、食洗機に白い石灰(tartre)が蓄積する。放置すると効率が落ち、故障の原因になる。ケトルは月1回、クエン酸かビネガーで洗浄するのが定番。
髪と肌: 硬水はシャンプーの泡立ちを悪くし、髪をパサつかせる。肌が乾燥しやすくなるという声も多い。渡仏後にシャンプーを変えたという在仏日本人は多数派だろう。
配管: 古い建物では石灰の蓄積で配管が狭くなり、水圧が低下することがある。オスマン様式の築150年の建物では配管交換が大きな修繕費になる。
対策
浄水ポット(carafe filtrante): Britaが最も普及している。フィルター交換は月1回、カートリッジ約€5〜€8(約800〜1,280円)。飲料水の石灰は除去できるが、シャワーや洗濯には無力。
シャワーヘッド用フィルター: Amazonフランスで€20〜€40(約3,200〜6,400円)程度。石灰を軽減するフィルター付きシャワーヘッドが売られている。効果は製品による。
ビネガー洗浄: 白いvinaigre blanc(ホワイトビネガー)はフランスの家庭の必需品。石灰の除去に万能。スーパーで1Lあたり€0.50(約80円)程度。
地域による硬度の違い
フランス全土が硬水というわけではない。ブルターニュ地方やマシフ・サントラル(中央山塊)地域は花崗岩地帯で、硬度が50〜100mg/L程度と比較的軟水に近い。一方、パリ盆地、シャンパーニュ、ロワール流域は石灰岩地帯で硬度が高い。
引っ越し先の水質はARS(Agence Régionale de Santé、地域保健局)のウェブサイトで郵便番号を入力すると確認できる。地方都市への転居を考えている場合、水の硬度は意外と生活の質に影響する要素だ。
石灰は「不便」であって「危険」ではない。ただ、この水と共存するための工夫が在仏生活の日常に溶け込んでいく。日本に一時帰国してシャワーを浴びると、水の柔らかさに驚くようになる。そのとき、自分がフランスの水に慣れたことに気づく。