マルセイユ——多民族・港湾都市での生活は、パリとは別のフランスだ
フランス第2の都市マルセイユでの生活実態を解説。北アフリカ系移民との共存、地中海の食文化、高い犯罪率の実態と安全な住み方、在住外国人から見たマルセイユの魅力。
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「フランスに住む」と言うと、多くの人がパリを想像する。でも在住外国人の中には「パリは選ばなかった」という人も多い。その選択先のひとつがマルセイユだ。
フランス第2の都市であり、地中海に面した港湾都市。パリとは根本的に違うフランスがここにある。
マルセイユという街の構造
マルセイユは紀元前600年にギリシャ人によって建設されたとされ、フランス最古の都市のひとつだ。人口は約90万人(都市圏では約180万人)。
北アフリカ(アルジェリア・モロッコ・チュニジア)系の移民とその子孫が人口の相当部分を占め、マグレブ料理・イスラム文化・アラビア語がマルセイユの日常に溶け込んでいる。また、アルメニア系・コモロ系・イタリア系など複数の移民コミュニティが歴史的に形成されてきた。
旧港(ヴィエイユ・ポール)周辺は観光客も多いが、少し離れると急にローカルな空気になる。16の区があり、区によって住民構成・雰囲気・安全性が大きく異なる。
生活費はパリより安い
マルセイユの大きな魅力のひとつが物価だ。
家賃の目安:
- スタジオ・1R(市内中心部): EUR 500〜800(約80,000〜128,000円)/月
- 1ベッドルーム: EUR 700〜1,100(約112,000〜176,000円)/月
- 同条件のパリと比較すると約40〜50%安い
食費もパリより低い。バシャン(魚市場)での新鮮な魚介類や、北アフリカ系の食材店での野菜・スパイスは特に安価だ。ブイヤベース(マルセイユ発祥の魚介スープ)は高級レストランでは1人前EUR 50(約8,000円)以上するが、港の食堂では手頃に食べられるバリエーションもある。
治安の実態
マルセイユは犯罪率が高いというイメージが先行しているが、在住者の実感は「エリアによる」に尽きる。
問題が集中するのは主に市北部の特定の地区(13・14・15区の一部等)で、麻薬取引に関連した抗争が発生することがある。これらのエリアを避け、南部(8・9区等)や旧港周辺・ル・パニエ地区に住む分には、日常的な危険を感じることは少ないという在住者の声が多い。
夜間の一人歩きに慎重であること、スマートフォンを無造作に出さないこと——これはマルセイユに限らずフランスの都市に共通する基本だ。
在住外国人にとってのマルセイユ
日本人の在住者はマルセイユよりパリに集中しており、日本語対応サービス・日系コミュニティはパリほど充実していない。自立した生活能力とフランス語力(または英語力)が、パリより強く求められる環境だ。
その代わりに、多様な文化が混在する日常、地中海の気候、パリより安いコスト、そして「ごちゃごちゃしているけれど活気がある街」を選ぶ外国人がいる。マルセイユは整然としていない。でもその乱雑さに魅力を感じる人には、パリより居心地がよかったりする。