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フランスは原子力で電気を輸出している——エネルギー政策のドイツとの対比

フランスの電力の約70%は原子力発電です。電力を隣国に輸出するフランスと、脱原発のドイツ。対照的なエネルギー政策の背景と現状を解説します。

2026-05-03
原子力エネルギー電力環境

この記事の日本円換算は、1EUR≒160円で計算しています(2026年5月時点)。為替は変動するので、現地通貨(EUR)の金額を基準にしてください。

ドイツは2023年4月に最後の原子力発電所を停止しました。その電気を隣のフランスから輸入しています——原子力で作った電気を。エネルギー政策は国の価値観を映す鏡で、フランスとドイツはその正反対に立っています。

フランスの原子力依存度

フランスの電力構成(RTE, 2024年):

  • 原子力:約65〜70%
  • 水力:約10〜12%
  • 風力:約8〜10%
  • 太陽光:約4〜5%
  • ガス火力:約5〜7%

56基の原子炉がフランス全土に18カ所の発電所に分散しています。全てEDF(フランス電力公社)が運営。EDFは約84%を国が保有する実質国営企業です。

なぜフランスは原子力を選んだのか

フランスの原子力への傾倒は1973年の石油危機に遡ります。

フランスには石油も天然ガスもほとんどありません。1973年の石油危機でエネルギー自給率の低さが致命的な弱点として露呈し、当時のメスメール首相が「Tout nucléaire(全て原子力へ)」政策を打ち出しました。

この決定は国家プロジェクトとして実行され、1975年から2000年までの25年間で56基の原子炉が建設されました。結果、フランスのエネルギー自給率は約55%(原子力を含む場合)まで上昇し、電力の純輸出国になりました。

電力の輸出

フランスは年間約50〜70TWhの電力を輸出しています(RTE, 2023年)。主な輸出先はイギリス、イタリア、スペイン、ドイツ、スイス、ベルギーです。

電力輸出はフランスの貿易黒字に貢献しています。ただし、2022年の夏は例外で、原子炉の老朽化による大規模メンテナンスと猛暑による冷却水不足で稼働率が低下し、一時的にフランスが電力の純輸入国になりました。

ドイツとの対比

項目フランスドイツ
原子力比率約65〜70%0%(2023年に全廃)
再エネ比率約25%約50%
CO2排出量/kWh約50〜60g約350〜400g
電気料金(家庭用)EUR 0.21〜0.25/kWhEUR 0.35〜0.42/kWh

ドイツは脱原発を選び、再生可能エネルギーを急拡大しましたが、風が吹かない日・太陽が出ない日はガス火力や石炭に頼る必要があります。結果として、CO2排出量はフランスの約6〜7倍。電気料金もフランスの1.5〜2倍です。

フランスは低炭素電力を安定供給している一方、原子力への依存度が高すぎるリスクも指摘されています。

在住者の電気料金

フランスの家庭用電気料金は、ヨーロッパの中では安い部類です。

  • 標準的な1ベッドルーム(オール電化):月EUR 60〜100(約9,600〜16,000円)
  • 暖房が電気の場合(冬):月EUR 100〜180(約16,000〜28,800円)

電力自由化以降、EDF以外の電力会社(TotalEnergies、Engie等)も選択できますが、EDFの規制料金(Tarif Réglementé)が最も安い場合が多い。

新型原子炉EPRとフランスの賭け

フランスは老朽化した原子炉の更新に加え、新型原子炉EPR(European Pressurized Reactor)の建設を進めています。ノルマンディーのフラマンヴィル3号機は、当初2012年稼働予定が10年以上遅延し、建設費も当初のEUR 3,300,000,000から約EUR 19,400,000,000(約3.1兆円)に膨張しました。

それでもマクロン大統領は2022年に「最大14基のEPR新規建設」を発表。フランスは原子力への賭けを倍にする方針です。

原子力に反対するフランス人は約40%いるとされますが(IFOP調査)、脱原発が政治的に主要議題になったことはほとんどありません。「原子力はフランスの主権の一部」という認識が根強い。電気をつけるたびに、その背後には国家戦略が動いています。

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