フランスの電気はほぼ原子力——世界最大の原発依存国の日常と将来
フランスは発電量の約70%を原子力に依存する世界最大の原発依存国だ。電気代が比較的安く、CO2排出も少ない一方、老朽化・廃炉・新規建設の課題を抱える。在留外国人が知っておくべき現状。
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フランスに住み始めると、電気代が意外と安いと気づく人がいる。「なぜフランスは電気代が安いのか」という問いに対する答えは一つだ——原子力だ。
フランスの原子力の規模
フランスは2024年時点で約56基の原子炉を稼働させており、総発電量の約70%程度を原子力が占める(フランス電力網当局RTE等の公表データをベースに、年度によって変動)。
これは世界でも突出した割合で、次に依存度が高い国と比べても格段に大きい。EDF(フランス電力公社)が主に運営を担っている。
なぜ原子力に頼るようになったか
フランスの原子力政策の原点は1970年代の石油危機だ。石油輸出国機構(OPEC)の禁輸措置でエネルギー危機を経験したフランスは、「エネルギー自立」を国策として原発建設を急速に推進した。
地政学的自立・エネルギー安定保障・国家的な技術力の誇示——これらが複合した政策判断だ。
脱炭素とのパラドックス
フランスの電力は単位あたりのCO2排出量が欧州の中でも特に低い(原子力は運転中のCO2排出がほぼゼロ)。再エネへの転換が難しいドイツなどが石炭に依存してCO2が高い時期に、フランスは低炭素だった。
この事実が「原子力は気候変動対策として有効か」という欧州内の議論を複雑にしている。EU「タクソノミー(持続可能な経済活動の分類基準)」でも、原子力をグリーン投資に含めるかどうかで議論があり、最終的には条件付きで含める決定がなされた(2022年)。
老朽化と新規建設
フランスの原発の多くは1970〜80年代に建設された。老朽化に伴い、定期検査・補修のために稼働率が下がる時期がある。2022年には稼働率が大きく低下し、電力価格の高騰と欧州への輸出減少が話題になった。
マクロン政権は2022年以降、新型原子炉(EPR2)の新規建設を宣言した。2026年時点で設計・環境審査が進行中だ。
在留外国人の生活との関係
電気代が比較的安いことは生活コストの観点では一部プラスになる。ただし電気料金は規制緩和後に複雑になり、TRVe(規制販売価格)が廃止されたことで選択肢が増えた一方で、比較が難しくなった。
フランスのエネルギー事情は日本の原子力議論とは文脈が異なる。どちらが正しいという話ではなく、政策選択の歴史的文脈を理解することが、その国の社会を理解する助けになる。