フランスの夜間薬局制度——深夜2時に薬が買える国の設計思想
フランスでは深夜でも薬局が開いている。pharmacie de gardeと呼ばれる当番薬局制度の仕組み、利用方法、夜間料金を解説します。
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フランスの薬局は、夜間でも開いている。正確には「開けなければならない」。pharmacie de gardeという当番制度がそれを可能にしている。
当番薬局(pharmacie de garde)の仕組み
フランスでは各県(département)が薬局の夜間・休日当番を管理している。地域の薬局が交代で夜間営業を担当し、住民がいつでも薬にアクセスできる体制を維持する。
当番薬局を探す方法は3つある。
- 電話: 3237(有料・約€0.35/分、約56円/分)に電話すると、最寄りの当番薬局を案内してもらえる
- 警察署: 最寄りのcommissariat(警察署)に行くと、その日の当番薬局の住所を教えてくれる
- 薬局のシャッター: 閉まっている薬局のシャッターや入口に、当番薬局の情報が貼り出されている
夜間料金の加算
当番薬局を利用すると、通常の薬代に加えて夜間加算料(majoration de garde)がかかる。20時〜翌8時の利用で€8.50(約1,360円)が上乗せされる。この加算分もSécurité socialeの対象になるため、mutuelle(補完保険)に加入していれば自己負担はほぼゼロになることが多い。
処方箋なしで買える薬の範囲
フランスの薬局で処方箋なしで買える薬(médicament sans ordonnance)は、日本のドラッグストアで買える市販薬とほぼ同じ範囲だ。解熱鎮痛剤(パラセタモール・イブプロフェン)、風邪薬、胃腸薬、アレルギー薬などが該当する。
ただし、日本と決定的に違うのは「薬は薬局でしか買えない」という点。スーパーやコンビニには薬は置いていない。これはフランスの薬事法が薬剤師による対面販売を義務付けているためだ。
なお、フランスの薬局の密度は高い。パリ市内では数百メートルおきに緑の十字マーク(croix verte)が光っている。薬局の数は全国で約21,000軒。コンビニのない代わりに薬局がある——そんな構造だ。
在仏日本人が知っておくべきこと
夜中に子どもが熱を出した。そんなとき、日本なら24時間営業のドラッグストアに駆け込める。フランスにはドラッグストアがない代わりに、この当番薬局制度がある。
3237に電話するか、最寄りの薬局のシャッターを確認する。それだけ覚えておけば、深夜の急な体調不良にも対応できる。フランスが「薬を薬剤師の手から渡す」ことにこだわり続けた結果、夜間でも専門家が対応する仕組みが残った。不便と安全のバランスをどこに置くか——その答えがこの制度に見える。