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パリのテラス席は公道の上にある——カフェテラスの許可制度と政治学

パリのカフェテラスは私有地ではなく公道の占有許可で成り立っています。許可料、規制、コロナ後の拡大とその反動を追います。

2026-05-24
フランスパリカフェテラス都市計画

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パリのカフェテラスでエスプレッソを飲んでいるとき、足元は公道だ。あの椅子とテーブルは、市から許可を得て歩道を占有している。

占有許可制度(autorisation d'occupation du domaine public)

パリ市では、カフェやレストランが歩道にテラス席を出すには「terrasse ouverte」の占有許可が必要になる。許可料は立地と面積で決まり、シャンゼリゼ通りの1㎡あたりの年間占有料は€1,000(約160,000円)を超える。裏通りなら€100〜€300(約16,000〜48,000円)程度。

パリ市の歳入においてテラス占有料は無視できない額で、年間約€50M(約80億円)とも言われる。

テラスの種類

  • terrasse ouverte: 歩道に直接テーブルを並べるタイプ。最も一般的
  • terrasse fermée: ガラスや壁で囲ったタイプ。暖房が入るため冬でも使える。許可のハードルが高い
  • contre-terrasse: 車道側にせり出すタイプ。コロナ禍で急増した

コロナ禍の拡大と反動

2020年、パリ市はロックダウン解除後に飲食店支援としてテラス席の拡大を許可した。車道の駐車スペースをテラスに転用する「contre-terrasse」が一気に広がり、パリの街並みが変わった。

しかし2023年以降、住民からの苦情が増加。深夜の騒音、歩行者通路の狭小化、車椅子の通行困難などが問題になった。パリ市は段階的に規制を元に戻しつつあり、contre-terrasseの許可基準は厳格化している。

カフェのテラス席、店内席、カウンター席で値段が違う

フランスのカフェでは同じエスプレッソでも場所によって値段が変わることがある。カウンター(comptoir)で立ち飲みすると€1.20(約192円)、店内のテーブル席で€1.50(約240円)、テラス席だと€2.00(約320円)——といった具合に。

これは法的に義務付けられた差ではなく、店側の裁量だ。ただし価格表(tarif)の掲示は義務付けられている。入口に「comptoir / salle / terrasse」の3段階で価格が表示されているカフェを見たことがある人も多いだろう。

テラス席のプレミアムは、あの場所に座る体験の対価であると同時に、市に払う占有料の転嫁でもある。

足元が公道であることを知ると、テラスのエスプレッソの味が少し変わるかもしれない。都市のインフラを一杯分の値段で借りているのだから。

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