男性が一人になれる場所——英国の「シェッド文化」とメンタルヘルス
英国には「Men's Shed(メンズシェッド)」というコミュニティ活動がある。定年後や離職後の男性が集まり、工作や修理をしながら会話する。孤独問題への社会的対応として注目されている。
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英国には孤独担当大臣(Minister for Loneliness)がいる。2018年に世界で初めて設置された役職だ。英国では孤独が深刻な社会問題として政策的に対処されている。
その文脈の中で注目されているコミュニティ活動の一つが「Men's Shed(メンズシェッド)」だ。
Men's Shedとは何か
Men's Shedはオーストラリア発祥のコミュニティ活動で、英国に2013年頃から広まった。英国では現在600か所以上の「Shed」が各地に存在するとされる(英国メンズシェッド協会の情報より)。
活動の中心は「何かを作る・直す」こと。木工、金属加工、電気修理、自転車整備などが多い。しかし本質は「場を共有すること」で、作業しながら自然と会話が生まれる構造を意図的に作っている。
日本で言えば、定年後に行き場をなくした男性が「毎朝図書館に来るおじさん」になる現象に似た問題意識がある。英国でも退職後に社会的つながりを失う中高年男性の孤独は深刻で、メンズシェッドはその受け皿として機能している。
なぜ「シェッド(小屋)」なのか
英国人男性にとって、庭の小屋(garden shed)は「一人になれる場所」の象徴だ。家族の気配から少し離れ、趣味に没頭できる私的空間。この文化的イメージを活かして、「みんなのシェッド」というコンセプトにした。
男性が「支援を受けに来た」ではなく「仕事をしに来た」という感覚で参加できることが重要だとされている。メンタルヘルスの支援を直接的に求める行動のハードルが、男性は特に高い。だから「作業を共にする場所」という形を取っている。
在英日本人との接点
在英日本人の中高年男性、特に単身赴任や早期退職後に英国に来た人には、この孤独問題が他人事ではない場合がある。
英語が得意でなくても、手を動かす作業をしながら隣の人と短い会話をするのは、語学学校のロールプレイより自然な英語の練習になる。
Men's Shedに参加したい場合は「Men's Shed UK」のウェブサイトで最寄りのグループを検索できる。多くのグループは参加無料か、わずかな会費(年間£10〜£20程度)で参加できる。
英国が「孤独」と向き合う姿勢
「孤独担当大臣」の設置は世界から注目されたが、政策の実効性については英国内でも議論が続いている。
ただし「孤独は個人の問題ではなく社会の問題だ」という認識が政策レベルに入ったこと自体は、意味がある変化だと考える研究者が多い。日本でも2021年に孤独・孤立対策担当大臣が設置されており、両国は似た問題意識を持って政策を模索している。
「話さなくていい。ただいるだけでいい」——Men's Shedの入口にこういう言葉を掲示しているグループがある。それが一番の参加ハードルを下げている。