英国の市民農園は「10年待ち」——なぜそれでも申し込む人が後を絶たないのか
英国各地の市民農園(アロットメント)は需要が供給を大幅に超え、待機リストが10年を超える自治体も。それでも申し込む理由と、英国人の土いじり文化を解説する。
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ロンドンの一部の自治体では、市民農園(アロットメント)の待機リストが10年を超えている。申し込んだ人が還暦を迎えた頃にやっと順番が来る計算だ。それでも毎年新規申し込みがある。
なぜか。英国人にとってアロットメントは単なる「野菜を育てる場所」ではないからだ。
アロットメントの歴史
英国のアロットメント制度は19世紀に遡る。産業革命で農村から都市に移った労働者に、自給用の小さな農地を提供するため始まった。第二次世界大戦中の「Dig for Victory(勝利のために耕せ)」キャンペーンで急拡大し、最盛期には全国で140万区画以上が運用されていたとされる。
現在は約30万区画が運用中とされ(英国アロットメント・レジャーガーデナー協会の推計値)、年間の需要は大きく供給を超えている。
年間利用料と区画の広さ
アロットメントの利用料は自治体によって異なるが、年間£50〜£150(約9,850円〜29,550円)程度が多い。標準的な区画は250㎡程度(10ロッドとも呼ばれる)。野菜・果物・花・ハーブなど何を育てても基本的に自由だ。
小屋(shed)を建てることも多く、道具置き場にしたり、雨宿りの場にしたりする。この小屋にこだわる文化があり、アロットメントの小屋を巡るフォトエッセイが出版されるほどだ。
待機の間に「コミュニティ農園」という手
待機期間の長さを嘆くだけでなく、代替手段を使う人も多い。
コミュニティ・ガーデンは複数人で区画を共有するタイプで、アロットメントより早く参加できることが多い。ロンドン各地に数十のコミュニティ・ガーデンがあり、ボランティアとして定期的に通う形が一般的だ。
また、シェアアロットメント(現オーナーが半分貸す)もある。SNSや地域掲示板で探せることがある。
在英日本人と土いじり
英国在住の日本人の中には、アロットメントを英国生活の象徴として楽しんでいる人がいる。「英国らしい生活を一番感じる場所」という表現が出てくることがある。
待機リストが長くても、申し込みは早いほど有利だ。自治体のウェブサイトから申し込める。ロンドン在住なら入居直後に申し込む、という行動が合理的とも言える。
一方で、アロットメントには維持管理の義務がある。雑草が繁茂したり、一定期間放棄したりすると「区画の返却」を求められる場合がある。定期的に通える生活リズムがあるかどうかを考慮した上で申し込む方がよい。
土に触れる時間が、ロンドンの忙しい生活のリセットになる——そんな感想を持つ人が多い。10年後の楽しみのために今日申し込む選択肢がある。