金曜の夜、ハイストリートで何が起きているか——イギリスの飲酒文化と夜間経済
週末の夜、イギリスの繁華街では独特の光景が広がります。ビンジドリンキング、夜間経済、そして「飲む文化」の社会的背景を在住者の目線で解説します。
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金曜の夜22時、マンチェスターのディーンズゲートやロンドンのソーホー。路上に人があふれ、笑い声とつんのめる足音が混ざり合う。日本の繁華街とは少し違う、独特の空気がある。
イギリスの飲酒文化、とりわけ「ビンジドリンキング(Binge Drinking)」は、長らく社会問題として論じられてきた。
ビンジドリンキングとは
WHOや英国保健機関のガイドラインによると、ビンジドリンキングは「一度に大量のアルコールを短時間で摂取すること」を指す。イギリスでは、週末の夜に大量飲酒する習慣を指す文化的・社会的文脈でも使われる。
英国保健安全局(UK Health Security Agency)や国民保健サービス(NHS)の各種調査は、イギリス成人の飲酒量が欧州の中でも多い水準にあることを継続的に示してきた(具体的な最新数値はNHS公式サイトを参照のこと)。
2005年のライセンシング法改正が変えたもの
2003年のライセンシング法(2005年施行)以前、イギリスのパブは夜11時に閉まることが義務づけられていた。「ラストオーダーが来る前に駆け込む」という行動が、かえって短時間での大量飲酒を生み出すという皮肉があった。
法改正で「24時間営業」が可能になったが、現実には深夜まで開けるバーが増えた程度で、飲酒問題が大幅に解決したわけではなかった。
「ナイト・エコノミー(Night Economy)」という視点
ロンドンには「ナイト・ツァー(Night Czar)」という役職が2016年に創設された。夜間の経済活動を振興しつつ、安全を確保するための調整役だ。音楽会場、クラブ、レストラン、バーが生み出す夜間経済は、ロンドンだけでも年間数十億ポンドの規模と推定される。
アルコール問題と夜間経済の維持、という両立が難しい課題に、自治体は常に向き合っている。
日本人から見た違和感と馴染み
日本から来た人が戸惑うのは、路上での飲酒や、酔った人が通りを歩いている光景だ。日本でも年末年始や花見で同様の光景はあるが、イギリスでは週末の恒例になっている。
逆に「飲む場で友人になりやすい」という面もある。パブのカウンターに並べば、見知らぬ人と自然に会話が始まる。このオープンさは、個人的なスペースを重視する日常のイギリス人とのギャップとして、初めて来た人を驚かせることもある。
最近の変化
若い世代を中心に「ソーバー・キュリアス(Sober Curious)」——あえて飲まないという文化も広がりを見せている。ノンアルコールビール、ナチュラルワイン、ボタニカル系ドリンクの市場が拡大している。「飲まないのはなぜ?」と聞かれにくくなった、という声も増えた。
飲酒文化は今も変わり続けているが、週末の夜の街の熱量は、しばらく変わりそうにない。