英国で現金を持ち歩かなくなった——コンタクトレス社会の実態と落とし穴
英国はコンタクトレス決済の普及率が欧州トップクラスで、日常の買い物でほぼ現金を使わない生活が可能だ。一方で現金が使えない場所での困難と、高齢者・低所得層への影響を解説する。
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英国では多くの場面でコンタクトレス決済(タッチ決済)が使える。地下鉄、バス、スーパー、カフェ、パブ、タクシー、フリーマーケット——日常のほぼすべてをカードかスマホだけで過ごせる。
財布を一切持ち歩かない英国人が増えている。これは誇張ではない。UK Finance(英国金融協会)の報告では、英国のコンタクトレス決済件数は毎年増加を続けており、2023年には国内決済の60%超がコンタクトレスになったとされている。
Oysterカードとコンタクトレスの関係
ロンドンの公共交通(地下鉄・バス・ナショナルレール一部路線)では、Oysterカード(ICカード)かコンタクトレスデビット/クレジットカード(または対応スマホ)を使う。
コンタクトレスとOysterカードの料金は同じ(同じキャップが適用される)。外国のVisaやMastercardのコンタクトレスカードも使えるが、海外発行カードは為替手数料と海外事務手数料がかかる場合がある。
在英日本人が渡英後まず作るべきものの一つは、英国の銀行口座に紐づいたデビットカードだ。Monzo、Starling、Revolutなどのフィンテック系口座は開設が比較的速く(オンライン完結・数日〜1週間程度)、コンタクトレス機能がすぐ使える。
現金が「使えない」場所の増加
英国でキャッシュオンリーの場所はほぼなくなった。逆に、カードオンリーの場所が増えている。
一部のカフェやレストランは「We're cashless(現金不可)」を明示している。路面バスはOyster/コンタクトレスオンリーで、現金でのバス乗車は原則不可(ロンドンは2014年に廃止)。
これは利便性の向上だが、課題もある。銀行口座を持てない層(ホームレス、信用スコアが低い人)や高齢者が「デジタル決済の外」に置かれる問題が指摘されている。英国政府は「現金使用の権利」を守るための法案を議論している。
スマートフォンが壊れると「詰む」
コンタクトレス社会の副作用として、スマートフォンの電池が切れたり壊れたりしたとき、財布も持っていないと本当に何もできなくなる。
地下鉄に乗れない、コンビニで水も買えない——そんな状況に陥った経験を持つ在英日本人の話がある。サブ用にコンタクトレスデビットカード1枚をパスポートケースや定期入れに入れておく、という備えが現実的だ。
日本との比較
日本はSuica/PASMOのICカード文化が先行したが、コンタクトレスカードよりQRコード決済(PayPay等)が後から普及した。英国はカード(Visa/Mastercard)のコンタクトレスが圧倒的主流で、QRコード決済はほとんど見かけない。
「日本のコンビニで当たり前にできたことが英国ではできない(逆もしかり)」という感覚は在英日本人がしばしば感じるものの一つ。どちらが上下ではなく、システムが違うと理解すると適応が楽になる。