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Charity Shop——イギリスの高街を支える「中古品で社会貢献」の仕組み

イギリスの高街(ハイストリート)にはOxfam、British Heart Foundation、Cancer Research UKなどの慈善団体が運営する中古品店がある。年間売上10億ポンド超。なぜイギリスでだけCharity Shopがこれほど発展したのか。

2026-05-16
イギリスCharity Shopチャリティ中古品ハイストリートリサイクル

この記事の日本円換算は、1GBP≒195円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(GBP)の金額を基準にしてください。

イギリスのハイストリート(商店街)を歩くと、3〜4軒に1軒がCharity Shop(チャリティショップ)だ。Oxfam、British Heart Foundation、Cancer Research UK、Barnardo's、Mind——慈善団体が運営する中古品店が全国に約11,000店舗ある。

中古の服が£3(約585円)、ペーパーバックが50p(約98円)、食器セットが£5(約975円)。売上は全額、慈善団体の活動資金になる。

Charity Shopの仕組み

ビジネスモデルは単純だ。

  1. 市民が不要品を寄付する(服、本、CD/DVD、食器、家具、おもちゃ等)
  2. ボランティアが仕分け・値付け・販売する
  3. 売上が慈善団体の活動資金になる

店舗スタッフの大半はボランティアだ。Charity Retail Association(チャリティ小売協会)によると、約23万人のボランティアがCharity Shopで働いている。人件費がほぼゼロのため、低価格販売でも利益が出る。

さらに、慈善団体はNon-Domestic Rates(事業用固定資産税)の80%免除を受けられる。この税制優遇がCharity Shopのコスト構造を根本的に有利にしている。ハイストリートで空き店舗が増えると、低コストで入れるCharity Shopが入居する——これがハイストリートのCharity Shop率が高い理由だ。

年間売上10億ポンド

Charity Shopの全英売上は年間約£10億〜£12億(約1,950億〜2,340億円)。最大手のBritish Heart Foundation(BHF)は約700店舗で年間売上約£2億。Oxfamは約600店舗で年間売上約£1億。

寄付される商品の中には高価なものが混ざることもある。デザイナーブランドの服、アンティーク家具、初版本——こうした「お宝」を探すのがCharity Shop巡りの醍醐味だ。

近年はオンライン販売も拡大しており、Oxfamはオンラインショップで高額商品を販売している。eBayとのパートナーシップで、各店舗の商品をオンラインに出品することも可能だ。

Gift Aid

Charity Shop独自の税制としてGift Aidがある。寄付者がGift Aid宣言書にサインすると、慈善団体は寄付品の売上に対して所得税の25%分を政府から還付請求できる。

例: あなたが寄付した服が£20で売れた場合、慈善団体は政府から追加で£5を受け取れる。寄付者の負担はゼロ。政府が事実上の補助金を出す仕組みだ。

Charity Shopで「Would you like to Gift Aid your donation?」と聞かれたら、Yesと答えるだけで慈善団体の収入が25%増える。

ボランティアのエコシステム

Charity Shopのボランティアには多様な人がいる。

退職者: 社会とのつながりを維持するために週2〜3回来る。最大のボランティア層。 学生: CVに書くWork Experience(職業体験)として。小売業のスキルが身につく。 求職者: Jobcentre(ハローワーク相当)が推奨する社会復帰プログラムとして。 メンタルヘルスの回復途上にある人: Mind(精神衛生慈善団体)のCharity Shopでは、ボランティア自体がセラピーの一環として機能している。

ボランティアは無報酬だが、交通費と昼食代が支給されることが多い。Charity Shopでのボランティア経験は、イギリスの就職活動でプラスに評価される。

Depop世代とCharity Shop

Z世代(1990年代後半〜2010年代前半生まれ)はCharity Shopのヘビーユーザーだ。背景にはサステナビリティ意識と節約志向がある。

Depop(フリマアプリ)やVinted(中古衣料品プラットフォーム)の普及により、Charity Shopで£5で買った服をオンラインで£15で転売するReseller(リセラー)も増えている。これに対してCharity Shop側は「本来の慈善目的から逸脱する」と懸念を示しているが、結果として商品の流通量は増えている。

日本人がCharity Shopを使うなら

イギリスに到着直後、家具や食器を揃えるのにCharity Shopは最適だ。IKEAで全部揃えると£500〜£1,000(約97,500〜195,000円)かかるところ、Charity ShopとFacebook Marketplaceを組み合わせれば£100〜£200(約19,500〜39,000円)で済む。

引越しの際は逆に、不要品をCharity Shopに寄付する。ゴミとして捨てるよりも環境負荷が低く、チャリティに貢献できる。寄付は営業時間内に店舗に持ち込むか、BHFのような大型家具を扱う団体は無料で引き取りに来てくれる。

衣類の品質は玉石混交だが、M&S(Marks & Spencer)やJohn Lewisのタグがついた服が£3〜£8で手に入ることはザラだ。新品同然の状態で寄付される服も多い。


主な参照: Charity Retail Association Market Report 2024(店舗数・売上データ)、HMRC Gift Aid制度概要、NCVO Civil Society Almanack ボランティア統計

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