イギリスの階級制度は現代でも生きている
イギリスの階級はアクセント・学校・住所・職業で今も機能する。表向きは平等な社会に見えて、なぜ出身校で人生が分かれるのか。在住者の目で見た現代の階級。
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ロンドンで長く働いていると、誰かのアクセントを聞いただけで「あ、パブリックスクール出身だ」とわかる瞬間がある。言葉の端々に残る、学校教育の痕跡。
イギリスの階級は消えていない。形を変えながら、今も機能している。
現代イギリスの階級の構造
かつての「上流・中流・労働者」という三分法は今では複雑化している。BBC主導の大規模調査(The Great British Class Survey、2013年)では、イギリスの階級を7分類に整理した。エリート、確立された中産階級、技術的中産階級、新しい豊かな労働者、伝統的な労働者階級、新興サービス労働者、プレカリアート(不安定な低所得層)だ。
この7分類の中で、「エリート」は人口の約6%だが、社会的資源の多くを保有しているという分析が示された。
アクセントという階級マーカー
イギリスではアクセント(発音)が階級の指標として機能することがある。「RP(Received Pronunciation)」と呼ばれる標準的なイギリス英語は、パブリックスクール(実際は高額の私立校)出身者に多く、BBCや政治の世界で「権威ある声」として認識されてきた。
一方で地域のアクセント(コックニー、スコシア訛り、ウェールズ訛りなど)は社会的文脈によって評価が分かれる。同じ言語でも「どう話すか」で人格・教育レベルを判断される場面がある。
パブリックスクールと大学閥
ハーロウ、イートン、ウィンチェスターなどの有名パブリックスクールの学費は年間£50,000(約9,650,000円)前後に達する。ここを卒業してオックスフォード・ケンブリッジに進学するルートは、イギリスのエリートの定番だ。
2023年のデータでは、首相経験者の約65%がオックスフォード大学出身だ。閣僚・裁判所判事・大手企業トップも、少数の私立校出身者が過度に多い傾向が複数の調査で示されている。
「階級がない」と言いながら機能する仕組み
面白いのは、多くのイギリス人が「今は階級なんてない」と言うことだ。階級を話題にすることが恥ずかしいとか、古い考えだという空気もある。しかし実際の就職・進学・社会的ネットワーキングの場面では、出身校・家族の職業・居住エリアが今も影響している。
この「表向きは平等、実際は機能する階級」という構造が、外から見ると奇妙に映る。
在住日本人から見た階級
日本人在住者から「イギリスの階級感は日本の出身大学による扱いの違いと似ている」という声がある。
ただし日本との違いは、アクセント・服装・所作まで含めた「身体化された違い」がより明確な点だ。どこの学校を出たかではなく、どう話すか・どう振る舞うかが関係する。
外国人という立場は、この階級システムの外側にいる場合が多い。「ジャパニーズなら階級関係ない」と言われることもある一方で、職場での扱いに微妙な差を感じる人もいる。
変化の兆しはあるか
SNS・スタートアップ文化・多様性推進の流れの中で、出身校ではなくスキルで評価するという方向性は確実に広がっている。ただしエリート層の再生産はまだ続いており、完全な実力主義社会になったとは言えない状況だ。
在住者として知っておくと、職場での微妙な空気感や会話の文脈が少し読めるようになる。