イギリスの生活費危機——エネルギー・食費高騰と在住日本人の生活変容
2022年以降、英国では光熱費が2〜3倍になり、食料品インフレは過去30年で最高水準に達した。在住日本人の家計は実際どう変わったか。数字と現場の両面から整理する。
この記事の日本円換算は、1GBP≒195円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(GBP)の金額を基準にしてください。
2022年、英国の光熱費上限額(エネルギー価格保証)は一般家庭で年£3,549(約69万円)まで上昇した。2020年比でほぼ倍。ロンドン在住の日本人駐在員の間でも「手当が追いついていない」という声が出た期間だ。
数字で見る2022〜2025年のインフレ
英国国家統計局(ONS)のデータによれば、消費者物価指数(CPI)は2022年10月に11.1%を記録し、1981年以来の高水準となった。食料品インフレは2023年春に19%超と、より深刻な水準に達した。
具体的な品目で言うと:
- 牛乳1リットル:2020年の約70p→2023年には£1.3〜1.5p超
- 鶏もも肉1kg:£3前後→£4.5〜5程度
- 電気代(標準使用量の場合):年£600前後→ピーク時£2,000超
2025年に向けてエネルギー価格は落ち着きを見せているが、食料品価格は高止まりしており、完全な「元通り」にはなっていない。
在住日本人への影響:駐在員と現地採用で差がある
「生活費危機」の影響は、在住形態によって大きく異なる。
駐在員の場合は会社が家賃手当・光熱費補助を出しているケースが多く、インフレの影響は個人負担の生活費(食費・交通・余暇)に限定される。ただし現地採用や留学後にそのまま就労している日本人の場合は、給与が物価上昇に追いついていない期間は実質的な生活水準が低下した。
特に影響を受けたのは、固定家賃の賃貸契約が更新になるタイミングだ。ロンドンの1LDK月額賃貸相場は、2020年の£1,400〜1,600から2024年には£1,800〜2,200超に上昇しているエリアも多い。
日本人の実際の対応策
在住日本人コミュニティで聞こえてきた対応策をまとめると:
食費の工夫:ASDAやリドル(Lidl)などのディスカウントスーパーへの移行が増えた。日本食材はジャパンセンター(London)やオンラインのJapan Centreで都度まとめ買いに切り替えた人も多い。
エネルギーの節約:断熱性能が低い英国の住宅(多くが100年超の建物)では、電気毛布の活用、セントラルヒーティングの設定温度を下げる、特定の部屋だけを暖めるなどの対策が一般化した。
移住先の再検討:ロンドンのコストに疲れて、マンチェスター・エジンバラ・ブリストルへの移転を選んだ日本人もいる。リモートワーク可能な職種であれば、地方都市移住の経済的メリットは大きい。
2026年の現状:落ち着いたが「戻った」わけではない
2026年現在、エネルギー価格は2022年のピークより低下している。だが食料品価格は以前より高い水準が定着しており、家賃は主要都市でまだ上昇が続いている。
「コスト・オブ・リビング・クライシス(生活費危機)」という言葉は使われなくなってきたが、それは危機が終わったのではなく、「高い状態」が新しい基準になったことを意味する。
渡英を検討している場合は、2020年以前の情報を基準にした生活費予算は作り直すことをお勧めする。
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