左側通行と英国の道路文化——右ハンドル移行の戸惑い
英国は日本と同じ左側通行・右ハンドル。なのになぜ戸惑うのか。ラウンドアバウト・速度表記・無灯火文化など、英国固有の道路ルールを在住者の視点で解説します。
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英国に来る日本人がよく言う。「左側通行だから楽だと思ってたのに、全然違った」。
方向感覚は確かに同じだ。日本と同じく左側を走り、ハンドルは右にある。だが英国の道路には、日本とは全く異なる「作法」が積み重なっている。
ラウンドアバウト——交差点ではなく合流地点
英国で運転に慣れない人が最初に戸惑うのが、ラウンドアバウト(環状交差点)だ。
英国には全国で約1万か所のラウンドアバウトがある。信号のない円形の交差点で、右から来る車(すでに環の中にいる車)が優先される。左折・直進・右折の全方向を、信号なしで1か所にまとめた設計だ。
日本でも近年ラウンドアバウトの導入が進んでいるが、英国の密度はまるで違う。郊外に出ると5kmに1か所のペースで現れることもある。慣れると信号待ちがない分スムーズに走れるが、複数レーンのラウンドアバウトは国際免許を持つ外国人でも混乱しやすい。
ルールはシンプルだ。環の中に車がいたら止まる。車がいなければそのまま進む。ただし「実際にどのタイミングで入れるか」の判断が難しい。地元のドライバーは隙間を見てかなりスムーズに合流していく。
速度制限の単位はmph
英国の速度制限はマイル毎時(mph)表記だ。
市街地: 30mph(約48km/h) 郊外一般道: 60mph(約96km/h) 高速道路(motorway): 70mph(約113km/h)
日本のkmhとは単位が異なるため、スピードメーターの読み替えが必要になる。レンタカーの多くはkm/hとmphの両方が表示されているが、道路標識はmphだけなので頭の中で変換する習慣が必要だ。
「30mph制限なのにみんなバンバン飛ばしている」と感じる場面がある。実際、英国では速度取締りカメラ(Speed Camera)の設置場所が事前にナビに表示される文化があり、カメラのない区間では速度制限を多少超えて走るドライバーが多い。これを「推奨」しているわけではないが、現実として知っておくと戸惑いが減る。
無灯火・霧灯・デイライト
日本では夜間の無灯火走行は論外だが、英国では昼間の走行でオートライトをオフにしているドライバーが一定数いる。薄暮の時間帯でも「まだ明るいから」とライトをつけない習慣が根強い地域もある。
一方、霧が多い英国ならではのルールとして「フォグランプ(霧灯)」の使用義務がある。視界が著しく低下した場合(目安は100m以内)、フロントとリアのフォグランプを点灯させることが法律で義務付けられている。霧でもないのにフォグランプをつけっぱなしにするのは後続車への迷惑行為とみなされる。
日本の免許を英国免許に切り替える
日本の免許証を持つ人が英国で長期在住する場合、日本の免許を英国免許に切り替える(Driving Licence Exchange)という選択肢がある。
英国はEU離脱後も日本との相互認証協定を維持しており、筆記・実技試験の免除で英国免許に切り替えられる。DVLA(Driver and Vehicle Licensing Agency)に申請書類を郵送する形が基本で、処理期間は数週間〜数ヶ月かかることがある。
運転免許の切り替えは義務ではないが、滞在が1年を超える場合は英国免許を取得しておく方が保険料の計算上有利になるケースがある。
英国の道路に慣れるには、ラウンドアバウトを自分のペースで通れるようになること——そこが最初のハードルだ。