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得票率40%で圧勝する政治——イギリスの小選挙区制という仕組み

2024年の総選挙で労働党は得票率34%で議席の63%を獲得しました。この「歪み」は欠陥か、それとも安定のための設計か。イギリスの選挙制度を解説します。

2026-06-21
選挙制度小選挙区制イギリス政治議会

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2024年7月のイギリス総選挙で、労働党は約33〜34%の得票率で下院議席の約63%を獲得した(各数値は報道ベースの概算)。一方、改革党(Reform UK)は14%を超える票を集めながら、議席はわずか5議席にとどまった。

この「不均衡」をどう見るか。

小選挙区単純多数制(FPTP)とは

イギリスの選挙制度は「First Past the Post(FPTP)」と呼ばれる小選挙区単純多数決制だ。全国を650の選挙区に分け、各選挙区で最多票を得た候補が1議席を取る。全体の得票率は関係ない。

選挙区内で「1位」になれば当選。49%取っても2位なら落選する。結果として、特定地域に支持基盤が集中している政党は議席を獲得しやすく、全国に薄く支持が広がっている政党は大きく割を食う。

「歪み」の論理と「安定」の論理

批判派は「民意を正確に反映しない」と言う。国民の3分の1しか支持していない政党が、議会の3分の2を握る。これを民主主義の歪みと見る立場だ。

支持派は「比例代表制より安定した政権を生む」と言う。比例代表では多党が乱立し、連立交渉が長引く。FPTPは過半数を持つ政権を産みやすく、政策実行力が担保できる——という論理だ。

どちらが正しいかは価値観の問題で、答えは一つではない。2011年の国民投票でイギリスは選挙制度改革(代替投票制への移行)を否決した。今の制度を選び続けているのは、イギリス有権者自身でもある。

二大政党制という構造

FPTPが長年維持されてきた理由のひとつは、自分たちに有利な制度を変える動機が二大政党(労働党・保守党)にないことだ。この「自己利益による制度維持」は、制度改革の最大の壁でもある。

とはいえ、近年はスコットランド国民党(SNP)、緑の党、自由民主党なども議席を獲得しており、かつての純粋な二大政党制は崩れつつある。

スコットランドとウェールズは別の制度

イギリス全体の話ではなく、スコットランド議会(Holyrood)やウェールズ議会(Senedd)の選挙には、FPTP要素に比例代表要素を組み合わせた混合制が使われている。地方分権(デボリューション)により、各地域が異なる選挙制度を持っているのは面白い点だ。

在住者として知っておくべきこと

永住権・市民権があれば投票権を得られるが、ビザ保持者には原則として国政選挙の投票権はない。ただし、英連邦諸国の市民には地方選挙に限り投票権が認められる場合がある。

選挙の仕組みを知ると、ニュースの読み方が変わる。「圧勝」「大敗」という見出しの数字は、制度の特性を踏まえないと正確に読めない。

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