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イギリスのエネルギー危機——プリペイメントメーターと燃料貧困の現実

イギリスの電気・ガス料金はなぜ高いのか。プリペイメントメーター、Energy Price Cap、燃料貧困の構造と在住者が知っておくべき制度を解説します。

2026-05-02
エネルギー光熱費生活費

この記事の日本円換算は、1GBP≒195円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(GBP)の金額を基準にしてください。

2022年の冬、イギリスでは「暖房をつけるか、食事をするか」の二択を迫られた家庭が数百万世帯にのぼりました。エネルギー価格の高騰は一時的な危機ではなく、イギリスの住宅と電力システムに根を張った構造問題です。

Energy Price Capとは

イギリスの家庭用電気・ガス料金は、政府の規制機関Ofgem(Office of Gas and Electricity Markets)が設定する「Energy Price Cap」で上限が決められています。これは料金の上限ではなく、1kWhあたりの単価と日額の基本料金(Standing Charge)の上限です。使用量に応じた総額には上限がありません。

Price Capの推移(標準的な家庭の年間上限額):

時期年額上限月額換算日本円換算
2021年10月£1,277£106約20,670円
2022年4月£1,971£164約31,980円
2022年10月£2,500(政府介入)£208約40,560円
2023年7月£2,074£173約33,735円
2024年4月£1,568£131約25,545円

2022年10月のCapは本来£3,549になるはずでしたが、政府が「Energy Price Guarantee」として£2,500に抑制する緊急措置を発動しました。その財源は税金です。

プリペイメントメーターの問題

イギリスの約400万世帯がプリペイメントメーター(PPM)を使用しています。これは電気やガスを事前にチャージして使う方式で、クレジットが切れると供給が止まります。

PPMの利用者は所得の低い世帯に偏っています。信用情報に問題がある、過去に料金を滞納した、賃貸物件に元から設置されている——こうした理由でPPMを使わざるを得ない層がいます。

問題の本質は、PPM利用者の方が通常メーターの利用者より料金が高いことでした。2023年4月まで、PPMのPrice Capは通常メーターより年£45〜80高く設定されていました。最も支払い能力が低い人が最も高い料金を払う——この逆進的な構造は「Poverty Premium(貧困割増)」と呼ばれ、社会問題化しました。

2023年7月からPPMと通常メーターのPrice Capは統一されましたが、PPM利用者にはもう1つの問題が残っています。

「自己切断」の現実

PPMのクレジットが切れると、電気やガスが止まります。これは「切断」ではなく「自己切断(self-disconnection)」と分類されます。エネルギー会社が意図的に止めたわけではない、という建て付けです。

Citizens Adviceの推計では、2022年にPPMで自己切断を経験した世帯は約300万件。冬場に暖房が止まることの健康リスクは深刻で、高齢者や乳幼児のいる家庭では生命に関わります。

2023年、エネルギー会社が滞納者のメーターを強制的にPPMに切り替えていた問題が報道で明るみに出ました。裁判所の令状を取らずに、脆弱な利用者(高齢者、障害者)のメーターを交換していたケースもあり、Ofgemが調査に乗り出しました。

燃料貧困と住宅の断熱問題

イングランドの約310万世帯(全体の約13%)が「燃料貧困」状態にあります(英国政府統計、2022年)。根底にあるのは住宅のエネルギー効率の低さです。築100年以上の物件が珍しくなく、断熱材が入っていない壁、単層ガラスの窓、隙間だらけのドアから熱が逃げ続ける。

エネルギーを全く使わなくても毎日かかる基本料金(Standing Charge)も問題です。電気1日約61p(約119円)+ガス約31p(約60円)で、年間合計約£336(約65,520円)。使用量ゼロでも請求が来る構造は、少量しか使わない低所得者に不利です。

在住者が知っておくべきこと

エネルギー会社の選択は賃貸でも自由です。比較サイト(Uswitch等)で料金を比べ、固定料金プランを検討する選択肢があります。PPMが設置されている物件に入居した場合、エネルギー会社に連絡すればスマートメーターへの無料交換が可能です。冬の光熱費は夏の2〜3倍になるのが一般的で、月£200〜300(約39,000〜58,500円)を前提に予算を組んでおくと安心です。

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