土曜の朝、ファーマーズマーケットへ——イギリスの「旬と地産地消」文化
ロンドンのボロ・マーケットからコッツウォルズの村市まで、イギリスには週末のマーケット文化が根付いています。食の楽しみ方が変わるかもしれない、その空気感を紹介します。
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土曜の朝8時。ロンドン橋のそばにあるボロ・マーケットには、もう人が集まり始めている。チーズ職人が試食を勧め、ベーカリーから焼きたてのパンの香りが漂い、農家の直売スタンドに地元産のイチゴが並ぶ。
「イギリス料理はまずい」という評判を聞いたことがある人は多い。しかし実際に食材を見ると、その評判を素直に受け入れる気にはなれない。
ファーマーズマーケットとは
ファーマーズマーケットは、農家や食品生産者が消費者に直接販売するマーケットだ。スーパーマーケットとは異なり、仲介業者を介さず、生産者の顔が見える。
全英ファーマーズマーケット協会(FARMA)の認定基準では、販売者自身または地元で生産・製造されたものしか出せない。サプライチェーンの透明性を担保する仕組みだ。
イギリス全土に数百ヶ所のファーマーズマーケットがあり、週末を中心に開催されている。
旬の楽しみ方
スーパーマーケットではいつでも同じ野菜が買えるが、ファーマーズマーケットは旬そのものを売っている。
初夏(5〜6月)はアスパラガス。8月はトマトとコーン。秋は根菜とリンゴ。冬はカブとケール——イギリスの農産物は年間を通じて豊かで、地域によって品種も異なる。ヘリフォードシャーのリンゴ、ケントのチェリー、ノーフォークの野菜。地名と食材が紐付いている文化は日本と似ている。
ボロ・マーケット以外のマーケット
有名なボロ・マーケット(ロンドン)以外にも、おすすめのマーケットは多い。
ポートベロ・マーケット(ノッティング・ヒル)はアンティーク・食・衣料が混在する週末マーケット。ブロードウェイ・マーケット(ハックニー)は地元感があり若い世代に人気。地方ではストラトフォード・アポン・エイヴォンやチェスターのマーケットも雰囲気がいい。
「まずい」という評判の背景
イギリス料理の評判の悪さには歴史的な背景がある。第二次世界大戦後の食糧配給制(ラショニング)が長く続き、食文化が停滞した時期があった。1990年代以降のロンドンは「食の砂漠」と言われた時代もある。
しかし今のロンドンは違う。移民が持ち込んだ食文化の多様性、シェフたちによる食材の見直し、ファーマーズマーケットを通じた食への意識の高まり——食の質は過去30年で急激に変わった。
「イギリスに住んで食が楽しくなった」という日本人の声を、決して稀に聞くわけではない。