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なぜイギリスの家は寒いのか——築100年の住宅と断熱の現実

セントラルヒーティングはあるのに、なぜか寒い。イギリスの住宅の断熱性能の低さと、エネルギー効率改善をめぐる政策・コストの現実を解説します。

2026-06-19
住宅断熱暖房エネルギー効率

この記事の日本円換算は、1GBP≒197円で計算しています(2026年5月時点)。為替は変動するので、現地通貨の金額を基準にしてください。

「なぜ窓が一枚なのか」と思ったことはないだろうか。

イギリスの住宅、特に1900〜1960年代に建てられたテラスハウスやフラットには、シングルグレージング(単板ガラス)の窓が残っているものが少なくない。外気が直接伝わり、冬は窓周りに結露が生じる。セントラルヒーティングはあるのに、なぜか寒い——これはイギリスの住宅が持つ構造的な問題だ。

ストック住宅の古さ

イギリスの住宅ストックは欧州でも古い部類に入る。築50年以上の住宅が全体の相当割合を占め、断熱材の施工基準が整備される以前の建物が多く流通し続けている。

「古い建物は情緒がある」のは確かだが、情緒はエネルギー効率に変換できない。暖めた空気が壁・窓・屋根から逃げ、ヒーティングを24時間つけていても室温が上がりにくいという現象が起きる。

EPC(エネルギー性能証明書)の存在

不動産売買・賃貸では、EPC(Energy Performance Certificate)の取得・開示が法的に義務付けられている。AからGの7段階で住宅のエネルギー効率を示し、AやBが高効率、FやGが低効率だ。

現在イングランドとウェールズでは、賃貸物件はEPC評価がE以上でなければならない(2024年時点)。ただし将来的にC以上へ基準を引き上げる議論が続いており、大家にとっては改修コストの問題として懸案になっている。

リトロフィット(断熱改修)のコスト

政府は「ボイラー・アップグレード・スキーム」「ECO4(エネルギー企業義務)」など、住宅の断熱改修を補助するスキームをいくつか用意している。低所得世帯向けに断熱材施工や窓交換に補助金が出る場合がある。

しかし中所得・高所得世帯の自己負担改修は費用がかかる。ダブルグレージング(複層ガラス)の交換、屋根裏断熱材の追加、外壁断熱——全て実施すれば数千〜数万ポンドの投資になる。

ヒートポンプへの移行

政府は2035年以降の新築への新規ガスボイラー設置を禁止する方針を示している(詳細は政策変更の可能性あり、最新情報を確認のこと)。代替として推進されているのがエア・ソースヒートポンプだ。

ただし古い住宅にヒートポンプを設置する場合、断熱改修が不十分だと効率が出ないというジレンマがある。「断熱→ヒートポンプ」の順番が重要だが、どちらも費用がかかる。

在住者への実用情報

賃貸の場合、入居前にEPCのランクを確認することは基本だ。GやFランクの物件は冬の光熱費が高くなりやすく、快適性も低い。内見時に窓のタイプ(シングルかダブルか)、ボイラーの年式を確認しておくと、光熱費の目安が立てやすくなる。

寒さはイギリス生活の名物のひとつ。対策なしに冬を迎えると、光熱費の請求額に驚くことになる。

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