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雨の国がなぜ水不足になるのか——ホースパイプ禁止令の不思議

雨ばかり降る印象の英国で、夏になると庭の水まきが禁止される。雨が多いのに水が足りないという矛盾の裏にある、貯水とインフラの構造的な問題を読み解く。

2026-08-13
水不足天気インフラ英国

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英国といえば雨、というイメージがある。傘が手放せず、空はいつも灰色。それなのに、夏になると「ホースパイプ・バン」——庭への水まきや洗車にホースを使うことを禁じる措置——が発令されることがある。雨ばかりの国が、水不足で給水制限をかける。この矛盾に、多くの外国人が首をかしげる。

雨が多いのに水が足りない。この逆説の答えは、空ではなく地上の仕組みにある。

「降る量」より「貯める量」

実は英国の年間降水量は、世界的に見て突出して多いわけではない。地域によっては、よく晴れる南東部の降水量がヨーロッパ大陸の一部より少ないこともある。「雨の国」という印象は、まとまって降るのではなく、しとしとと頻繁に降ることから来ている面が大きい。

そして降った雨が、必ずしも使える水として蓄えられるわけではない。貯水池の容量、地下水の量、そして雨が降る場所と人が多く住む場所のずれ。これらが噛み合わないと、雨が多くても蛇口の先で水が足りなくなる。問題は天気ではなく、水を集めて配るインフラの側にある。

古い配管から漏れ続ける水

英国の水道インフラには、19世紀に敷設された古い配管が今も多く残る。老朽化した管からは、配水された水のかなりの割合が地中に漏れ出していると言われる。せっかく貯めた水が、利用者に届く前に消えていく。

これはバケツの底に穴が開いた状態に似ている。いくら雨で上から注いでも、下から漏れていれば溜まらない。降水量を増やすことより、漏れを減らすことのほうが本質的な解決になる。だが、地中に埋まった膨大な配管網を更新するには莫大な費用と時間がかかる。

猛暑が常態化する難しさ

近年は、英国でも夏に記録的な高温が観測されるようになった。気温が上がれば水の需要は跳ね上がり、貯水池の蒸発も進む。雨の降り方も極端になり、降るときはまとめて降って洪水を起こし、降らないときはまったく降らない。安定して少しずつ降る、という英国らしい雨が崩れつつある。

こうした変化に、古いインフラが追いついていない。だから「雨の国の水不足」という、一見ありえない事態が現実に起きる。

在英日本人が知っておくとよいこと

夏に滞在・居住するなら、ホースパイプ禁止令が出る可能性を頭に入れておくとよい。禁止中にホースで庭に水をまいたり洗車したりすると、罰則の対象になることがある。じょうろを使った手まきや、雨水を溜めて使う方法は通常認められている。

日常では、シャワーを短くする、食器洗いの水を流しっぱなしにしないといった節水が呼びかけられる。雨が多い国だからと油断せず、夏は水が貴重な資源になりうると意識しておくと、地域のルールにも自然と適応できる。雨の国の水不足は、英国のインフラの古さと気候の変化を同時に映す鏡でもある。

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