家を買っても土地は借り物——英国リースホールドという中世の亡霊
英国でマンションを買うと、多くの場合「リースホールド」で土地は借り物のまま。家を所有しても完全には自分のものにならない独特の制度を読み解く。
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英国でマンションを購入した日本人が、契約書を読んで困惑することがある。家を買ったはずなのに、その建物が建つ土地は自分のものではない。一定の年数だけ「借りている」状態で、地主に毎年お金を払い続け、契約期間が満了に近づくと家の価値が下がっていく。これがリースホールド——借地権付き所有という、英国独特の制度だ。
家を買っても、土地は借り物。この仕組みは、中世から続く土地所有の歴史が現代に残した「亡霊」のようなものだ。
二つの所有形態
英国の不動産には大きく二つの形がある。一つは「フリーホールド」、土地ごと完全に所有する形。多くの一戸建てがこれにあたる。もう一つが「リースホールド」、建物は所有するが土地は地主から長期で借りる形。マンションやフラットの多くがこちらだ。
リースホールドの契約期間は数十年から999年まで様々だ。期間が長ければ実質的にフリーホールドに近いが、残り期間が短くなると話は変わる。残存期間が一定を下回ると、住宅ローンが組みにくくなり、売却価格も下がる。時間とともに価値が目減りしていく、いわば「期限つきの所有」だ。
なぜこんな制度が残るのか
リースホールドの起源は、貴族や大地主が土地を手放さずに収益を得る仕組みにある。土地は自分のものとして残したまま、その上に建てる権利だけを人々に貸す。地代を取り続けられるし、契約が切れれば土地は手元に戻る。地主にとって都合の良いこの仕組みが、何世紀も生き延びてきた。
これは、土地という有限の資源をめぐる権力構造の化石だ。所有権という概念が、実は「完全な所有」と「条件つきの所有」に分かれていること。リースホールドは、その分裂を今に伝えている。近年は制度改革の議論が進んでおり、借地人の権利を強める方向で見直されつつあるが、変更され得る部分も多く、状況は流動的だ。
見えにくいコスト
リースホールドには、地代のほかにも「サービスチャージ」と呼ばれる管理費がかかる。共用部分の維持や修繕にあてられるこの費用は、物件によって大きく異なり、ときに高額になる。購入前に把握しておかないと、住み始めてから想定外の負担に直面することがある。
契約期間の残りがどれくらいか、地代やサービスチャージがいくらか、延長の条件はどうか。これらは物件の実質的な価値を左右する重要な要素だ。
在英日本人が購入で気をつけること
英国で住宅購入を検討するなら、その物件がフリーホールドかリースホールドかは最初に確認すべき点だ。リースホールドなら、残存期間、地代、サービスチャージ、そして契約延長の可否と費用を必ず調べておきたい。
複雑な契約内容を自力で読み解くのは難しいため、不動産取引に詳しい専門家——事務弁護士や不動産の専門業者——に相談しながら進めるのが現実的だ。日本の「土地と建物をまとめて所有する」感覚のまま契約すると、後で思わぬ落とし穴にはまりかねない。英国の家は、所有という言葉の意味が日本と少し違う。その違いを理解しておくことが、安心して住まいを選ぶ第一歩になる。