ロンドンの屋外プール「ライド」に夏の行列ができる理由——英国人の水泳文化
英国の屋外公共プール「ライド(Lido)」は1930年代に全盛期を迎え、多くが廃止されたが近年復活の兆しがある。テムズ川での水泳許可議論と合わせ、英国の屋外水泳文化を解説する。
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ロンドンに夏が来ると、ハムステッド・ヒースの混浴ポンド(自然の水泳池)に行列ができる。ブライトンのシー・レーンズ・ライドには週末に何百人も集まる。パーラメント・ヒル・ライドは早朝6時から人が並ぶ。
日本人の感覚では「屋外の水泳施設ってそんなに人気なの?」と感じるかもしれない。でも英国人にとって屋外水泳(wild swimming / open water swimming)は、近年急速に注目を集めている文化現象だ。
ライドとは何か
「ライド(Lido)」はイタリア語の「海岸」を語源とする英語で、屋外の公共プールを指す。1930年代に英国各地に数百カ所が建設され、当時は労働者階級の夏の娯楽の中心だった。
その後、屋内プールの普及、メンテナンスコストの高さ、利用者の減少により多くが閉鎖された。1970〜90年代にかけて数多くのライドが廃止されたとされている(英国全体の廃止数の正確な統計は諸説ある)。
2000年代以降、環境意識の高まりや「自然に近い体験」への需要増とともに、廃止されたライドの復活プロジェクトが各地で進んでいる。ブリストル、レスター、ヘレフォードなどで修復・再開の動きがある。
ハムステッド・ヒースの「ポンド」
ロンドン最有名の屋外水泳場所は、ハムステッド・ヒース(北ロンドン)の天然水泳池「Swimming Ponds」だ。混浴池、男性専用池、女性専用池の3つがあり、年間を通じて泳げる(真冬も!)。
入場は無料または寄付制で管理されており、アーリーモーニングスイマーたちが早朝5時から来る。水温は季節によって8〜20度台まで変化する。
「なぜ冬に泳ぐのか」と地元民に聞くと、「メンタルヘルスに効く」「頭がクリアになる」という答えが返ってくることが多い。コールドウォータースイミングの効果に関しては科学的研究も進んでいる(慶応大学や英国各大学で研究事例あり)。
テムズ川で泳げる日が来るか
ロンドン市民の長年の夢として「テムズ川での水泳再開」がある。テムズ川は現在、水質・安全の観点から遊泳禁止だが、20世紀前半には市内でも泳げる場所があった。
2022年にロンドン市長が「テムズ川での水泳実現を目指す」と表明し、テンプル地区での試験的な施設構想が議論されている。水質改善は着実に進んでおり(テムズ21やPLA Thames Waterが報告書を公開)、数十年以内に実現する可能性が議論されている。
在英日本人と屋外水泳
日本の感覚では、プールといえば塩素のにおいのする管理された施設だ。屋外で自然水域を泳ぐことへの抵抗感がある人もいる。
一方で、英国の屋外水泳コミュニティには日本人参加者も増えており、「一度体験したら病みつきになった」という声は珍しくない。特に夏のハムステッド・ヒースは観光客にも人気で、水着とタオルだけ持って電車で行ける手軽さがある。
もし英国の夏に「観光地を巡る以外の体験」を探しているなら、ライドや屋外プールは選択肢の一つになる。