多文化社会の英国——日本人が接する多様性の実態
英国は世界有数の多文化社会。日常の職場・学校・近所での多様性との接し方、日本との違い、在住者が感じるリアルな体験を紹介します。
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英国への移住前、「多文化社会」という言葉を知識として知っていた。でも実際に住んでみると、それが日常のあらゆる場面に現れることに気づく。職場での宗教への配慮、食の選択肢の多さ、近所で聞こえてくる言語の多様さ。日本では経験しなかった「当たり前」が積み重なる。
職場での多様性
ロンドンの職場では、同じチームにインド、ナイジェリア、ポーランド、ブラジル出身の同僚がいることが普通にある。英語が共通語だが、バックグラウンドが異なると「常識」の前提が違う場面も出てくる。
宗教的配慮は日本の職場にほぼない感覚だが、英国では必須の要素だ。イスラム教徒の同僚は金曜の礼拝時間に外出し、ラマダン期間中は昼食をとらない。ヒンドゥー教徒の同僚は牛肉を食べない。これを「特別扱い」ではなく「普通のこと」として対処するのが英国の職場文化だ。
ランチの選択肢も、ベジタリアン・ヴィーガン・ハラール・コーシャーが明示されているのが一般的。弁当を持参する文化は英国にもあるが、周囲への配慮(においの強い食べ物を職場で食べることへの気遣い)は日本に近い感覚で理解できる部分がある。
日本人が感じるギャップ
直接的なコミュニケーション 英国人(特にイングランド)は表向き間接的なコミュニケーションをとることがあるが、南アジア系・東欧系・アフリカ系の同僚はより直接的な表現をする傾向がある。「空気を読む」コミュニケーションに慣れた日本人には最初に戸惑いが出ることがある。
人種・宗教についての発言 英国では人種・宗教・ジェンダーに関する発言へのセンシティビティが日本より高い。職場の会話での冗談の境界線が日本とは異なる部分があり、意図せず不快感を与えてしまうケースがある。新しい職場では最初の数か月は周囲の感覚を観察することを勧める。
日本人への見られ方 東アジア系として一括りにされることは今も起きる。「日本語で話せますか」と言いながら中国語で話しかけられる体験は在住者に共通する。気に病む人もいれば「説明の機会」として使う人もいる。
コミュニティとしての繋がり
ロンドンには日本食スーパー(Japan Centre、Atariーya等)や日本語書籍が手に入る書店があり、日本人コミュニティの厚さはヨーロッパ有数だ。JLCC(Japanese Language Consultation & Support Centre)のような相談支援機関もある。
一方で、日本人コミュニティに閉じこもりすぎると多文化社会の豊かさを享受しきれない側面もある。隣人とのコミュニケーション、地域のフードフェス、コミュニティイベントへの参加が、ロンドン暮らしを立体的にする機会になっている。
多様性の中に身を置くことは、自分が「マジョリティ側」の感覚を疑い直すきっかけになる。日本では気づかなかった自分の固定観念に気づく体験が、英国生活の思わぬ収穫になることがある。