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NHSの歯医者に3年待ち——イギリスの歯科医療危機

「イギリス人は歯が汚い」というステレオタイプの背景には、NHS歯科医の深刻な不足があります。無料のはずの歯科治療がなぜ受けられないのか、現状を解説します。

2026-06-10
NHS歯科医療費歯科医不足

この記事の日本円換算は、1GBP≒197円で計算しています(2026年5月時点)。為替は変動するので、現地通貨の金額を基準にしてください。

「イギリスに来たら、歯医者は早めに探しておいて」——在英日本人がよく口にするアドバイスだ。

NHSは原則として無料(または低額の定額料金)で医療を提供するシステムだが、歯科医療だけは少し話が違う。NHS歯科には患者リストがあり、登録を受け付けているNHS歯科医を見つけるのが年々難しくなっている。

NHSの歯科費用の仕組み

NHSの歯科治療は完全無料ではなく、3段階の定額制になっている(2024年時点のイングランドの標準):

  • バンド1(検診、スケーリング等):25.80ポンド(約5,082円)
  • バンド2(詰め物、抜歯等):70.70ポンド(約13,928円)
  • バンド3(クラウン、義歯等):306.80ポンド(約60,440円)

これは民間歯科と比べると格段に安い。民間で治療すると、クラウン1本で500〜1,000ポンド(約9.9〜19.7万円)を超えることもある。

なぜ受けられないのか

問題は「受けたくても受けられない」患者が多いことだ。

NHS歯科医は国との契約で定められたユニット数(UDA: Units of Dental Activity)をこなすことで報酬を得る仕組みだが、このUDAシステムが「採算が悪い」と言われてきた。結果として、NHS契約を手放して民間専業に転換する歯科医が増加している。

2020年代に入り、この問題は顕在化した。NHS歯科を受け付けているクリニックに問い合わせると「新規患者は受け付けていない」「ウェイティングリストに入っても数年かかる」という回答が返ってくることがある。BBC等のメディアは「数年待ち」の状況を繰り返し報道してきた。

緊急の場合

急性の歯痛や感染症の場合、NHS 111に電話するか、Urgent Dental Care(緊急歯科)を探す手段がある。NHS 111はオペレーターが状況を聞き、緊急性があれば近隣の受け付け可能な施設を紹介してくれる。

ただし「痛みはある程度あるが緊急ではない」というレベルでは、この経路でも予約が取りにくい場合がある。

日本人在住者へのアドバイス

現実的な対応策として、民間歯科を定期検診に使い、NHSのウェイティングリストには登録しておく——という二本立てを取る人が多い。

日本から来る際に、出発前に歯科検診を済ませておくのも有効だ。渡英後に急いで探す必要がなくなる。

イギリスのNHSは医科(GP)でも問題を抱えているが、歯科はその中でも特に深刻な分野として、政府・メディア・業界団体が改革を議論し続けている状況だ。

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