土地の所有者がいても歩ける——イギリスの「ランブラーズ」とアクセス権
イングランドには「他人の土地でも特定の場所を歩く権利」が法的に認められています。フットパスとアクセス権の制度は、日本とは全く異なる土地観を反映しています。
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農場の中を突っ切って歩いていたら農場主が出てきた。怒鳴られるかと思ったら、「フットパスはあちらですよ」と案内してくれた——そんな経験がある人はいるだろうか。
イングランドとウェールズには、公的に登録された「フットパス(Public Footpath)」「ブライドルウェイ(Bridleway)」「バイウェイ(Byway)」などの公的通行権のネットワークがある。これらは私有地の上であっても、公衆が歩ける権利として法的に保護されている。
フットパスとは何か
フットパスは地図上に明示されており(Ordnance Surveyの地図やラムブラーズのアプリで確認できる)、土地の所有者が変わっても消えない。道を妨害したり、「私有地につき立入禁止」の看板でフットパスを塞ぐことは違法だ。
歩行者の権利は土地所有者の権利と並存している、というのがこの制度の基本的な考え方だ。
Open Access Landという概念
2000年のCountryside and Rights of Way Act(CROW法)により、「Open Access Land」という概念が導入された。山岳地帯、荒地、荒野、丘陵地など指定されたオープン・アクセス・ランドでは、フットパス以外の場所でも自由に歩き回ることができる(登山、散策等)。
ただしアクセス権は自転車、馬、キャンプへは原則として適用されない。また地主が動物保護、農業等の理由で一時的にアクセスを制限できる条件もある。
スコットランドの「野外アクセス権」
スコットランドはさらに進んでいる。2003年のLand Reform (Scotland) Actにより、スコットランドでは原則として陸地・内水域への責任あるアクセス権(Responsible Access)が全国民に認められている。適切な行動規範に従う限り、土地所有者の許可なく歩き・キャンプ・サイクリングできるという、欧州でも珍しい制度だ。
「ランブラーズ」という団体
1935年創設のラムブラーズ(The Ramblers)は、フットパスの保護と普及に取り組む市民団体だ。ボランティアがフットパスの状態を点検し、自治体への修繕要求、地図の整備、団体ウォークの企画をしている。
会員になると全国のフットパスウォークイベントに参加でき、知らない地域を地元のメンバーと一緒に歩く体験ができる。
日本人在住者として楽しめること
フットパスウォーキングは、週末の過ごし方として在住者に人気が高い。道具は基本的にウォーキングブーツとレインコアがあれば十分。Ordnance Survey(OS)のアプリを入れておけばフットパスを地図上で確認できる。
「どこまでが歩いていいか」を気にせず自然の中を歩ける体験は、日本にはない感覚だ。