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制服が「平等装置」になる国——イギリスの学校制服制度の構造

イギリスの公立・私立ほぼ全ての学校で制服が義務。経済格差の可視化を防ぐ平等装置として機能する一方、指定制服の高コストが新たな格差を生む矛盾を分析。

2026-05-29
制服学校教育格差子育て

この記事の日本円換算は、1GBP≒195円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(GBP)の金額を基準にしてください。

アメリカやフランスの公立校では私服が一般的だ。しかしイギリスでは公立校(State school)の約95%が制服を義務化している。階級社会のイギリスで、制服は「家庭の経済力を見えなくする装置」として機能している——はずだった。

制服のコスト問題

The Children's Societyの2020年調査によると、Secondary school(中等学校、11〜16歳)の制服一式の平均コストは£337(約65,700円)。Primary school(初等学校、4〜11歳)でも£315(約61,400円)だった。

高コストの原因は「指定制服」だ。学校のロゴ入りブレザー、特定色のネクタイ、指定ショップでしか買えないスポーツウェア。スーパーで£10のポロシャツが売られていても、ロゴ入りだと£25になる。

Education (Guidance about Costs of School Uniforms) Act 2021

保護者の負担を軽減するため、2021年に学校制服コスト指針法が成立した。この法律により:

  • 学校は制服コストを「合理的」に保つ義務がある
  • 指定ショップを1店舗に限定することを避けるべき
  • 高価なブランド品指定を控えるべき
  • 中古制服の再利用を推奨する仕組みを設けるべき

ただし「合理的」の具体的な金額基準は示されておらず、強制力は限定的だ。

中古制服のエコシステム

イギリスの学校には、PTAやチャリティが運営する制服リサイクルの仕組みがある。学期末に不要になった制服を回収し、次の学期にバザー形式で£1〜£5で販売する。

Uniformdという中古制服専門のオンラインプラットフォームもある。寄付された制服がサイズ・学校名別に整理され、無料または低価格で購入できる。

Non-Uniform Day という逆転装置

年に数回、「Non-Uniform Day」(私服の日)がある。チャリティへの寄付(通常£1)と引き換えに私服で登校できる日だ。

子どもにとっては待ちに待った日だが、ここで制服が隠していた経済格差が可視化される。ブランド物のスニーカーを履いてくる子と、普段着のままの子。制服の「平等装置」としての機能が、この日だけ解除される。

日本の制服との違い

日本の中学・高校の制服も高い(3万〜5万円程度)。しかしイギリスの制服制度が日本と決定的に違うのは、4歳から義務化されている点だ。Primary schoolのReception year(4〜5歳)から制服。成長が速い幼児の制服を毎年買い替えるコストは小さくない。

もう一つの違いは、体育の授業用の「PE kit」が別途必要なことだ。指定のスポーツシャツ、ショーツ、靴下、トレーナー。冬季はラグビー用のジャージが追加される学校もある。

実用的なアドバイス

  • 入学前に学校のウェブサイトで制服リストを確認する
  • 指定制服はできるだけ早く発注する(夏休み直前は品切れが多い)
  • Marks & Spencer、Tesco、Sainsbury'sなどのスーパーが売る汎用制服(白ポロシャツ、黒ズボンなど)でOKな部分はそちらで揃える
  • PTAの制服リサイクルイベントを活用する
  • 名前のラベルを全てのアイテムに縫い付ける(紛失が多い)

イギリスの制服は、平等を目指す理想と、コストという現実の間で揺れている。それでも「朝、何を着ていくか悩まなくていい」という実用面での恩恵は、子育て中の親にとって確かにある。

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