イギリスで家を買う——ソリシターとコンベイヤンシングという独特の手続き
イギリスの不動産売買は、日本とは全く異なる仕組みで動いている。ソリシター(弁護士)が必須で、契約交換まで「破談可能」という特殊な慣行を解説します。
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イギリスで家を買うと決めたとき、最初に直面するのは「ソリシター(Solicitor)を探せ」という指示だ。
日本で不動産を買うとき、弁護士が必須になることはまずない。しかしイギリスでは、買い手と売り手の双方がソリシター(もしくはコンベイヤンサーと呼ばれる資格者)を雇い、法的な手続き全般を委ねる。これが「コンベイヤンシング(Conveyancing)」と呼ばれる不動産移転手続きだ。
「契約交換」まで何でも破談できる
イギリスの不動産売買で最も日本人が驚く点は、「Exchange of Contracts(契約交換)」まで、売り手も買い手も法的な拘束なしに取引をやめられることだ。
売り手が別の高値オファーを受けたら、最後の最後でひっくり返すことができる。これを「ガスンピング(Gazumping)」という業界用語がある。逆に買い手が直前でやめることも可能だ。日本でいう手付金のような法的拘束が、契約交換前には存在しない。
この慣行は「市場の自由」を尊重する思想と関係しているが、購入希望者がサーベイ(建物調査)代を払い、ソリシター費用をかけた末に直前でガスンピングされる、という理不尽な体験をした人も多い。制度改革の議論は何度も起きているが、根本的な変更には至っていない。
コンベイヤンシングのステップ
実際の流れはこうなっている:
- オファー受諾 → 双方のソリシターを確定
- ソリシターが「ローカル・サーチ」(自治体記録の確認)、「タイトル・サーチ」(所有権確認)を実施
- 買い手側がサーベイ(建物状態調査)を依頼——RICS認定のサーベイヤーが物件を調査
- モーゲージ(住宅ローン)の正式申請・承認
- Exchange of Contracts(この時点で双方に法的拘束が発生、通常手付金10%を入金)
- Completion(所有権移転・鍵渡し、通常契約交換から2〜4週間後)
ステップ3のサーベイは、100〜数百ポンド(約2〜10万円)の費用がかかる。古い物件ほど問題が見つかりやすく、サーベイ結果をもとに値引き交渉をするケースも多い。
費用の目安
ソリシター費用は物件価格によって異なるが、数百〜2,000ポンド(約4〜39万円)程度が多い。加えてスタンプ・デューティー(印紙税)がかかる。2024〜2025年時点では、初回購入者には一定の優遇措置があった(詳細は都度変更されるため、公式サイトで確認を)。
また「チェインチェーン(Chain)」という概念がある。Aが家を買うためにBに家を売る、BはCから買う、というように複数の取引が連鎖している状態だ。チェーン内のどこか1件が破談すると全員に影響する。「チェーンなし(Chain-free)」の物件は、そのため高値がつきやすい。
なぜこんなに時間がかかるのか
通常、オファー受諾から完了まで3〜6ヶ月かかる。日本の不動産売買と比べると格段に遅い。これはソリシター同士のやり取り、ローカル・サーチの処理時間、チェーンの調整などが積み重なるためだ。
慣れない人には不安の連続だが、プロセスを理解しておくだけで心理的な負担はかなり軽くなる。