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ストライキは日常——イギリスの労働組合文化と「争議権」の意味

鉄道が突然止まる、看護師がストに入る。日本ではあまり馴染みのないストライキが、イギリスではなぜ頻繁に起きるのか。労働組合文化の背景を読み解きます。

2026-06-05
ストライキ労働組合トレードユニオンイギリス労働

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2022〜2023年の冬、イギリスに住んでいた人は覚えているだろう。鉄道、郵便、看護師、救急隊員——さまざまな職種が次々とストライキに入り、日常生活が頻繁に乱れた。

日本からイギリスに来た人の多くが、この光景に戸惑いを覚える。「なぜ普通にストができるのか」「会社は損をしないのか」「利用者への影響は考えないのか」。疑問は尽きない。

ストライキは権利として守られている

イギリスでは争議権(Right to Strike)は法的に保護された権利だ。1906年のTrade Disputes Actを起点に、労働組合が組織的にストを行う法的根拠が確立されてきた。もちろん手続きは必要で、組合員の投票で一定以上の支持を得ること、事前通告を出すことなど、条件はある。しかし「ストをすること自体」は違法でも背信でもない。

日本でも法律上はストライキが可能だが、実際には戦後から現在に至るまで多くの企業・業種でストは事実上「しないこと」が慣行になってきた。イギリスはその対極にある。

産業革命期に築かれた労使関係

19世紀の産業革命期、工場労働者は劣悪な条件で長時間労働を強いられた。この時代に生まれた労働組合(Trade Union)運動が、今のイギリス労使関係の原型だ。

TUC(Trade Union Congress、英国労働組合会議)は1868年創設。全国の主要組合を束ねる上部組織として、今も政治的な影響力を持つ。労働党(Labour Party)はもともと労働組合が作った政党という経緯もあり、労組と政治の関係は根深い。

サッチャー改革とその後

1980年代、マーガレット・サッチャー首相は大規模な労働組合改革を断行した。ストライキへの制限強化、組合の法的特権縮小。1984〜85年の炭鉱ストライキは、政府対組合の歴史的対決として記憶されている。結果として組合の組織率は低下し、民間セクターでのストは減った。

しかし公共セクター(医療・交通・郵便など)では、依然として組合が強く残っている。2022〜23年のストライキラッシュはこの構造を反映している。インフレによる実質賃金の低下に対して、公共セクター労働者が団体交渉の最終手段としてストに踏み切ったのだ。

在住者として知っておくべきこと

ストライキは事前にアナウンスされることが多い。鉄道であれば、National Railのウェブサイトやアプリで影響する路線・日程が通知される。完全に止まるわけではなく、「最低限のサービス(Minimum Service)」が確保されることもある。

在住者としては、ストライキ情報をチェックする習慣をつけておくのが現実的だ。TfL(ロンドン交通局)のアプリや、各組合のSNSアカウントは情報が早い。

「なぜ利用者を巻き込むのか」という感情は理解できる。ただ、イギリスの文脈では「ストができることが、労働者の交渉力を保つ」という考え方が社会に根付いている。その前提を知るだけで、ストライキニュースの読み方が変わる。

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