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税金・確定申告

イギリスの税制——所得税45%・NI・ISAまで。ロンドン勤務の日本人が払うリアルな税負担

イギリスの所得税(PAYE/Self Assessment)・National Insurance・ISA・日英租税条約・Non-Domステータスまで、ロンドン在住日本人のリアルな税負担を解説。

2026-04-09
所得税PAYENational InsuranceISASelf AssessmentNon-Dom租税条約確定申告

この記事の日本円換算は、1GBP≒195円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(GBP)の金額を基準にしてください。

ロンドンで働く日本人にとって、税負担は日本とどう違うのか。結論から言えば、「給与£50,000(約975万円)超」あたりから日本より重くなる。そして£100,000(約1,950万円)を超えると、税率の急激な跳ね上がりに直面する。

イギリスの税制を理解するうえで押さえたいのが、PAYEと自己申告(Self Assessment)の違い、そして投資非課税枠のISAだ。順に整理する。

所得税の基本構造

イギリスの所得税は、2025-26年度(4月〜翌3月)の税率は以下のとおり。

区分所得範囲(年収)税率
非課税枠(Personal Allowance)£12,570まで0%
基本税率(Basic Rate)£12,571〜£50,27020%
高税率(Higher Rate)£50,271〜£125,14040%
追加税率(Additional Rate)£125,141以上45%

税率だけ見ると日本と大差ない印象だが、£100,000〜£125,140の範囲では「Personal Allowanceが段階的に消滅する」という独特の仕組みがある。この区間では実効税率が60%に跳ね上がる。

年収£100,000を少し超えたところが最も「損な区間」になるため、ボーナスや副業収入が£100,000前後に達する場合、年金拠出などで課税所得を調整する人も多い。


National Insurance(NI)——日本の社会保険に相当

所得税とは別に、National Insurance Contributions(NIC)が給与から天引きされる。

雇用者(Employee)のNI税率(2025-26年)

年収区間税率
£12,570以下0%
£12,570〜£50,2708%
£50,270超2%

雇用主(Employer)も従業員の給与に対してNIを支払う(2025年4月以降は15%に引き上げ。雇用コスト増加の要因として話題になっている)。

年収£50,000の場合の実際の手取り(概算)

項目金額(年)
総支給£50,000
所得税(PAYE)約£7,486
NI(従業員分)約£3,016
手取り約£39,498(約770万円)

日本の社会保険料(健康保険+厚生年金)は給与の約14〜15%に相当するが、イギリスのNIは同規模。税+NIの合計で見ると、£50,000程度の年収では日本と大きな差はない。


PAYE vs Self Assessment

PAYEとは

Pay As You Earn。給与所得者のほとんどはこの仕組みで、所得税とNIが毎月の給与から自動天引きされる。確定申告が不要なケースが多く、日本の「年末調整」に近い。

Self Assessment(自己申告)が必要なケース

以下に該当する場合、毎年1月31日までに申告が必要になる。

  • 年収が£100,000超
  • フリーランス・自営業収入がある
  • 副収入が£1,000超(家賃収入、投資収益含む)
  • 海外収入がある
  • 高額所得者で子育て給付金(Child Benefit)を受給している

Self AssessmentはHMRC(英国税務当局)のオンラインポータルで申告できる。初めての場合、UTR(Unique Taxpayer Reference)取得に最大10営業日かかるため、早めの登録を推奨する。


ISA——年間£20,000の非課税投資枠

Individual Savings Account(ISA)はイギリス在住者が利用できる非課税の貯蓄・投資制度。日本のNISAの「原型」でもある。

ISAの種類

種類特徴年間上限
Cash ISA定期預金・普通預金型£20,000
Stocks & Shares ISA株・ETF等に投資可能£20,000
Lifetime ISA(LISA)住宅購入・老後資金(18〜39歳限定)£4,000(政府が25%上乗せ)
Innovative Finance ISAP2Pレンディング等£20,000

全種類合計での年間上限は£20,000。運用益・利子・配当は全て非課税。

在住している間は積み立てられるが、帰国後は新規拠出ができなくなる点に注意が必要だ。ただし、既存のISAは帰国後もそのまま保持でき、非課税の運用は続けられる。


日英租税条約——二重課税を防ぐ仕組み

日本とイギリスの間には租税条約がある(2014年発効の改定条約)。主な内容は以下のとおり。

  • 給与・事業所得: 原則として就労国での課税(イギリス在住・就労→英国課税)
  • 配当: 源泉徴収税率10%(条約なしの場合は最大20%)
  • 利子: 源泉徴収税率10%
  • 年金: 受領国での課税(日本に帰国後に英国年金を受け取る場合は日本課税)

イギリスで就労している間は、日本での所得税申告義務は基本的に生じない(日本の非居住者扱い)。ただし日本に住民票が残っている場合や、日本国内の不動産収入がある場合は別途検討が必要だ。


Non-Domステータス——廃止が決定した「節税優遇」

「Non-Dom(Non-Domiciled)」とは、イギリスに居住しているが「ドミサイル(永住意思のある本籍地)」が英国外にある人を指す特別なステータスだ。

従来はRemittance Basis(送金課税主義)を選択でき、海外収入のうちイギリスに送金した分だけが課税対象になるという優遇があった。

しかし、2025年4月に制度が廃止され、**4年間の「FIG(Foreign Income and Gains)免税制度」**に移行した。

  • イギリスに最初に移住した場合、最初の4年間は海外収入・キャピタルゲインが非課税
  • 4年を超えると、全世界所得が課税対象になる

以前の「長年Non-Domで海外資産を課税から守る」という使い方は実質的にできなくなった。超富裕層のUK離脱(スペイン・UAE・ポルトガル等への移住)はこの改正が背景のひとつとされている。


ロンドン勤務日本人の実効税負担まとめ

年収(GBP)日本円換算実効税率(所得税+NI)
£30,000約585万円約19%
£50,000約975万円約21%
£80,000約1,560万円約30%
£100,000約1,950万円約34%
£150,000約2,925万円約42%

日本の場合、社会保険料込みで年収1,500万円超あたりから実効負担率40%を超える。イギリスは£125,000(約2,437万円)前後でその水準に達する。

高収入層にとっての税負担は日本とそう変わらないが、給与£50,000程度の「普通の外国人就労者」なら日本と大差ない水準と見ていい。ISAで積み立てながら、Personal Allowanceをきちんと活用することが基本的な節税の考え方になる。


参考情報

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