深夜のロンドンを歩き回るキツネ——都市型野生動物との共存と英国人の反応
ロンドンには推定10,000頭以上の都市キツネが生息しているとされる。ゴミを漁るが駆除はされず、ペット感覚で見る人もいれば害獣と見る人もいる。英国の都市野生動物との関係を解説する。
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深夜、ロンドンの住宅街でゴミ袋を漁る影がある。キツネだ。朝起きたらゴミが散乱していることもある。近所の庭でキツネが昼寝している光景も珍しくない。
ロンドンのキツネ推定個体数は諸説あるが、10,000頭以上という数字が長年引用されている(英国哺乳類協会などの報告より)。
なぜ都市に住み着いたのか
キツネが都市に移住し始めたのは20世紀中頃とされる。ロンドン郊外の住宅地が拡大した時代に、もともと農村に住んでいたキツネが人間の生活圏と重なるようになった。
都市のキツネは農村のキツネより小型化し、人間を恐れなくなっていく傾向がある。残飯・ゴミ袋・コンポスト・ガーデンの生ゴミが豊富なロンドンは、キツネにとって食料が確保しやすい環境だ。
駆除しない英国の文化的背景
英国ではキツネは野生動物として一定の保護を受けており、都市キツネの組織的な駆除政策は多くの自治体で行われていない。
「キツネは悪くない、ゴミ管理が悪い」という考え方が英国では広く共有されている。ゴミ袋をキツネに荒らされるのは「しっかりしたゴミ箱(fox-proof bin)を使っていないから」と解釈されることが多い。
狐狩り(fox hunting)は2004年に英国で禁止された。野生のキツネを犬で追いかけて殺す伝統的な貴族文化だったが、動物福祉の観点から法律で禁じられた(例外的な形で続けられているケースもあるが、法的グレーゾーン)。
英国人の反応はさまざま
都市キツネに対する英国人の反応は二分される。
「かわいい、餌をあげたい」派と「害獣、ゴミを散らかして困る」派だ。餌を与えることで個体数が増えるリスクを指摘する専門家もいる一方、「都市キツネはもう文化の一部」という見方もある。
SNSではロンドンのキツネ写真がよく共有され、「今朝庭にいた」という投稿には好意的なコメントがつくことが多い。
在英日本人が驚く場面
日本では都市部でキツネに出会う機会はほぼない。初めて夜道でキツネと目が合う経験は、驚きと「英国に来たんだ」という実感をセットで与えてくれることがある。
夜のロンドンを歩いていて「キツネに出会ったら」という想定をしている人は少ないと思うが、出会う可能性は十分ある。噛まれるリスクは低いが、近づきすぎないのが基本的なマナーだ。
ハムステッド・ヒース、リッチモンドパーク(ここは主に鹿)、エッピングフォレストなど大きな緑地では、夕暮れ時にキツネを見かける確率が高い。