地下鉄から下水道まで——イギリスのインフラはなぜ「古い」のか
ロンドンの地下鉄は世界初(1863年開業)。下水道は1860年代建設。現代都市を支えるインフラが150年以上前に作られた遺産であることの意味を考えます。
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世界で最初に地下鉄が走ったのはロンドンだ。1863年1月10日、メトロポリタン・ライン(現在のロンドン地下鉄の一部)が開業した。
160年以上前に敷かれたトンネルの上を、今日も何百万人が通勤している。
ビクトリア朝の遺産
19世紀後半のビクトリア朝は、イギリスの都市インフラが一気に整備された時代だ。地下鉄、上下水道、電信、ガス管、鉄道——現代都市の骨格が、この時代に集中的に建設された。
ジョゼフ・バザルジェットが設計したロンドンの下水道システムは1860年代に建設され、コレラの蔓延を止めた。驚くべきことに、その一部は今も現役で機能している。
「古さ」が生む制約
世界最古の地下鉄システムという誇りは、同時に制約でもある。初期に建設されたトンネルは断面積が小さく、最新の車両を入れにくい。空調の設置が難しいため、夏のチューブ内はひどく暑い(駅によっては35度を超える)。ホームドア(スクリーンドア)の設置も、プラットフォームの形状が均一でないため難しい。
鉄道全般でも、「プラットフォームと車両の隙間(Gap)」が大きい、急勾配が多い、カーブが急——といった設計上の制約が、古いインフラに伴う問題として残っている。
「壊して作り直す」ことの難しさ
では、なぜ全部新しくしないのか。
まず費用。ロンドン地下鉄の全面的な再建は現実的ではない。次に、都市機能を止めずに改修することの難しさ。「使いながら直す」のは、設計を一から作るより何倍も複雑だ。
さらに、歴史的建造物の保護義務もある。ビクトリア朝の駅舎や橋の多くはリステッド・ビルディング(文化財)指定を受けており、外観の大幅な変更ができない。
新しいインフラとの共存
クロスレール(Elizabeth Line)は2022年に開業した新しい路線で、近代的な大型車両と空調完備のトンネルを持つ。このコントラストは象徴的だ。古いビクトリア朝の地下鉄と、21世紀に建設された路線が同じネットワークに存在する。
ロンドンはいつでも、新旧が混在する都市だ。1世紀以上前のアーチ型れんが造りの駅構内に、スマートフォンで支払うコンタクトレスの改札が並んでいる。
在住者として知っておくこと
夏のチューブは暑い。特にセントラルラインは「だから電車に乗りたくない」という常套句があるほど。扇子を持参するのは大げさではない。
遅延や信号故障も日常的だ。TfLのアプリで「Service Status」を確認する習慣が、イギリス在住者には必須のルーティンになっている。