英国の家に「玄関ホール」がある理由——ヴィクトリア朝住宅の設計哲学
英国でよく見るテラスハウスはヴィクトリア朝時代に大量建設された。細長い間取り、フロントルームとバックルームの分離、後付けキッチンなど、英国住宅の特徴と日本との違いを解説する。
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英国で賃貸物件を探すと、多くの物件が「2-bed terrace」や「Victorian conversion」という表現を使っている。テラスハウスとは連棟式住宅のことで、英国の住宅の約30%を占めるとされる(英国国勢調査の住宅種別データより)。
その多くが150年以上前に建てられたヴィクトリア朝の建築だ。当時の設計が今の生活にそのまま使われている。
ヴィクトリア朝テラスハウスの間取り
典型的な2階建てテラスハウスの間取りはこうだ。
1階に前後2部屋(フロントルームとバックルーム)。フロントルームは応接室として使われていた。バックルームは家族の日常スペース。2階に寝室。バスルームは後付けが多い(もともとはなかった)。庭は裏にある。
細長いレイアウトが特徴で、道に面した側と庭側で部屋の役割が分かれている。「他人に見られる部屋」と「家族だけの部屋」の分離が設計に組み込まれている。
なぜ「玄関ホール」があるのか
英国住宅に入ると多くの場合、すぐに居室には入れない。小さな廊下(hallway)がある。日本の家にも玄関はあるが、英国のhallwayはそれより広めで、コートをかけるスペースや階段の入口になっている。
19世紀の設計思想では、来客と家族生活を混ぜないことが重要だった。玄関ホールが「バッファゾーン」の役割を果たしている。
現代の英国人もhallwayを大切にする。散らかっていると「だらしない家」の印象を与えるとされる。在英日本人が賃貸に入ったとき「玄関の活用をどうするか」と悩むことがある。
ダブルグレーズド(二重窓)の事情
ヴィクトリア朝の窓はシングルグレーズ(一枚ガラス)が多かった。断熱性が低く、冬は激しく結露する。多くの物件でdouble glazing(二重窓)への交換が行われてきたが、築年数が古い物件はシングルのままのことがある。
賃貸物件を選ぶとき「double glazed?」を確認するのは英国では基本の質問だ。
在英日本人の住宅選び
日本人が英国で賃貸を探すとき、日本との感覚の差に戸惑うポイントがいくつかある。
まず、部屋の広さの表示が「㎡」ではなく「square feet(ft²)」または「bedroom数」で表示されることが多い。1平方フィート≒0.093㎡。日本の「2LDK」「3DK」のような間取り表現はない。
次に、「furnished(家具付き)」か「unfurnished(家具なし)」かを明示してある。英国は家具付き賃貸が多く、ベッド・ソファ・テーブルが最初から入っている物件が大多数だ。
そして「EPC rating(エネルギー効率評価)」。AからGで評価される省エネ性能の証明書で、古い物件はEやF評価のことがある。光熱費に直結するので確認しておきたい。
古い建物に住むことへの心理的抵抗が少ない人なら、ヴィクトリア朝物件は天井が高く部屋に風格があるのでおすすめされることがある。ただし隙間風と暖房費の高さを覚悟する必要もある。