イギリスのビザ・在留資格ガイド——Skilled Worker、BNO、Graduate Visaの選択肢
イギリス在住・移住を考える日本人向けに、Skilled Worker Visa・Graduate Visa・Global Talent・ILRの要件と費用を詳しく解説。2025年最新情報。
この記事の日本円換算は、1GBP≒195円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(GBP)の金額を基準にしてください。
イギリスのビザ制度は、Brexit後に大きく変わった。EU市民でも就労ビザが必要になり、非EU圏の日本人と同じ土俵になった。その結果、就労ビザの制度は整備が進み、仕組みは比較的わかりやすくなっている。
ただし、費用が高い。ビザ申請料に加えて、医療利用のための「IHS(Immigration Health Surcharge)」が毎年£1,035(約20万円)かかる。3年ビザなら約60万円が最初に飛ぶ計算だ。
この記事では、日本人が利用できる主なビザの種類と、永住権(ILR)取得までの流れを整理する。
主要ビザの比較
| ビザ種別 | 主な対象 | 有効期間 | 申請料(海外から) |
|---|---|---|---|
| Skilled Worker Visa | スポンサー企業あり就労者 | 最大5年 | £769〜1,420 |
| Graduate Visa | UK大学卒業者 | 2年(博士3年) | £700 |
| Global Talent Visa | 学術・芸術・テック分野の高度人材 | 最大5年 | £623 |
| Innovator Founder Visa | 起業家(VC等による承認必要) | 3年 | £1,486 |
| BNO Visa | 香港パスポート保持者とその家族 | 最大5年 | £180 |
| Student Visa | フルタイム学生 | コース期間+最大2年 | £490 |
Skilled Worker Visa——就労ビザの基本
日本人がイギリスで働く場合、最も一般的な選択肢がSkileld Worker Visaだ。
基本要件
- スポンサー企業(認定雇用主)が必要: 雇用主がUKVIの認定を受けている必要がある。全ての企業が申請できるわけではない
- 給与要件: 年£26,200(約511万円)以上、かつ職種ごとに定められた最低賃金(Going Rate)以上
- 英語要件: CEFRのB1レベル以上(IELTS 4.0相当)
2024年4月の改正で、最低給与が£26,200に引き上げられた(それ以前は£20,480)。給与水準が低い職種でのビザ取得が難しくなっている。
費用(2025年時点)
| 項目 | 金額(GBP) | 日本円換算 |
|---|---|---|
| ビザ申請料(英国外から、3年以下) | £769 | 約15万円 |
| ビザ申請料(英国外から、3年超) | £1,420 | 約28万円 |
| IHS(3年分) | £3,105 | 約61万円 |
| スポンサーによるCertificate of Sponsorship | £239 | 約5万円 |
合計すると、3年ビザで最低80万円前後のコストが最初にかかる。これは日本のビザ申請と比べると相当高い。
スポンサーが取れる企業
「スポンサーになれる企業かどうか」は、GOV.UKで公開されているRegister of Licensed Sponsorsで調べられる。約9万社が登録されており、大手外資系企業はほぼカバーされている。中小企業や新興企業の場合は確認が必要だ。
Graduate Visa——UK大学卒業者の2年間
英国の大学(学士・修士・博士)を卒業した人なら申請できるGraduate Visa。スポンサー不要で就労・求職が可能な点が魅力だ。
- 有効期間: 2年(博士号取得者は3年)
- 就労制限: なし(業種・職種の制限なし)
- 申請要件: UK認定機関での学位取得、申請時にUK国内にいること
- 申請料: £700(約14万円)+ IHS
ただし、Graduate Visaから他のビザへの延長はできない。2年(または3年)以内に別のビザ(Skilled Worker等)を取得するか、出国するかの選択になる。「卒業後の就職活動期間」として使うビザだ。
Global Talent Visa——高度人材向けの特別枠
学術・芸術・テック・エンジニアリング・デジタル分野の「卓越した人材」向けのビザ。スポンサー不要で、「Exceptional Talent」(第一線の人材)と「Exceptional Promise」(有望な人材)の2段階がある。
審査は各分野の認定機関(Endorsing Body)が行う。
| 分野 | 認定機関 |
|---|---|
| 学術・研究 | The British Academy / Royal Society等 |
| デジタル・テック | Tech Nation(現在はDOIT) |
| 芸術・文化 | Arts Council England |
| 建築・エンジニアリング | RIBA等 |
審査が厳しい反面、取得できれば就労の自由度が高く、5年後の永住権申請でも優遇される(Exceptional Talentカテゴリは3年で申請可能)。
BNO Visa——香港パスポート保持者の特別枠
BNO(British National (Overseas))ビザは、香港の市民権を持つ人向けの特別なビザ。日本人は対象外だが、香港在住の日本人配偶者や家族が対象になるケースがある。
2021年1月に開始。5+1年(合計6年)で永住権申請資格を得られる。費用がSkileld Workerより安く(£180)、給与要件もない点が特徴だ。
Innovator Founder Visa——起業家向け
イギリスで事業を起こしたい人向けのビザ。以前の「Innovator Visa」「Start-up Visa」が2023年4月に統合された。
主な要件:
- 認定機関(Endorsing Body)の承認が必要(VC・アクセラレーター・英国政府が認定した機関)
- 革新的なビジネスアイデアであること(既存ビジネスのコピーはNG)
- 最低投資額の規定はないが、実質的に資金調達か十分な資本が必要
日本のスタートアップから参入する場合、まずEndorsing Bodyとの関係構築が必要になる。Innovate UKやTech Nationの認定プログラムへの参加が現実的な入口だ。
永住権(ILR)取得の条件
Indefinite Leave to Remain(ILR)はイギリスの永住許可。英国籍への帰化(自然化)の前段階でもある。
一般的な条件(Skilled Worker等)
- 継続して5年間イギリスに在住していること
- 直前12ヶ月に180日以上国外に出ていないこと(累積の上限もある)
- 英語能力証明(B1レベル)
- Life in the UK Test(英国の文化・歴史・制度に関するテスト)に合格
- 犯罪歴がないこと
Life in the UK Testとは
24問のマークシート式テスト。19問以上正解で合格(合格率75%以上)。テスト費用は£50(約1万円)。問題は公式のStudy Guideをもとに作られている。
日本語での対策情報はほぼないが、英語のStud Guideは公式で購入でき、模擬問題サイトも豊富にある。「意外に難しい」という声は多いので、過去問を繰り返し解くのが有効だ。
ILR申請料
£2,885(約56万円)。永住権の申請料としては世界でも高い部類に入る。
取得後は、ほぼイギリス人と同じ扱いで就労・居住できる。NHSの利用にもIHSが不要になる。
ビザ取得のコスト総まとめ(Skilled Worker 5年の場合)
| 段階 | 費用(概算) |
|---|---|
| Skilled Worker Visa申請料(5年) | £1,420(約28万円) |
| IHS(5年分) | £5,175(約101万円) |
| ILR申請料 | £2,885(約56万円) |
| 合計(最低ライン) | 約185万円 |
スポンサーが申請料を負担してくれる企業も多い。オファーをもらったタイミングで、どこまで費用負担があるかを確認しておくと良い。
まとめ
| ケース | 推奨ビザ |
|---|---|
| スポンサーがある就職が決まっている | Skilled Worker Visa |
| UK大学卒業直後 | Graduate Visa → 就職後にSkilled Workerに切り替え |
| 学術・テック・芸術の第一線にいる | Global Talent Visa |
| イギリスで起業したい | Innovator Founder Visa |
| 香港パスポートを持つ | BNO Visa |
ビザの制度は毎年変わる。特に給与要件は引き上げ傾向にあるため、申請時点でGOV.UKの公式情報を必ず確認すること。
参考情報
- UK Visas and Immigration(UKVI)公式: gov.uk/government/organisations/uk-visas-and-immigration
- ビザ申請料一覧: gov.uk/government/publications/visa-regulations-revised-table
- Register of Licensed Sponsors: gov.uk/government/publications/register-of-licensed-sponsors-workers