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ウィンブルドンの行列は「テニスを見に来ていない」人が並ぶ——英国夏の奇習

世界最古のテニス大会ウィンブルドンで、毎年数千人が前夜から野宿して入場を待つ。多くは試合よりストロベリー&クリームと芝生のピクニックが目的だという現象を解説する。

2026-07-02
ウィンブルドンテニス英国の夏

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ウィンブルドン選手権の期間中、会場の外には「ザ・キュー(The Queue)」と呼ばれる長蛇の列が毎日できる。前夜から並ぶ人もいる。テントを張る人もいる。「ザ・キュー」は公式に管理されており、ガイドブックまで存在する。

驚くのはその中に、テニスをほとんど見ないつもりで来ている人が相当数いることだ。

「ザ・キュー」という文化装置

ウィンブルドンは事前チケット販売と当日販売を組み合わせている。当日券を求めて並ぶのが「ザ・キュー」だ。センターコートと第1コートのチケットは非常に入手困難だが、アウトコート(外側の試合コート)はある程度当日券が出る。

ここで一つの事実がある。アウトコートへのグラウンド入場券を持っていれば、芝生のパブリックビューイングエリアで大型スクリーンを眺めながらイチゴを食べることが主な活動になる人が相当数いる。

「ザ・キュー」に並ぶ行為そのものが目的化しているとも言える。友人と徹夜し、折りたたみ椅子に座り、近隣住民が振る舞うお茶をもらい、夜明けの芝生で雑談する。この非効率な時間を楽しむことが「英国の夏を生きている」感覚につながっている。

ストロベリー&クリームの経済学

ウィンブルドン期間中、会場内で消費されるストロベリーは推定で2週間に30トン以上とされている(公式の発表する量は年によって異なるが、この規模感は広く報道されている)。

ストロベリー&クリームの一皿は£3(約591円)前後。高くはない。でも会場内で食べることに意味がある。コート脇の白いデッキチェアに座り、白と緑のストライプを眺めながら赤いイチゴを食べる——この絵が英国の夏の象徴として機能している。

イチゴ自体はイギリス産(ケント州産が多い)で、6月下旬から7月にかけてがちょうど旬だ。季節感と伝統が重なっている。

日本との「観戦文化」の差

日本のスポーツ観戦は試合そのものへの集中度が高い。座席に着いたら試合を見る。食べ物はあくまで補助だ。

ウィンブルドンは違う。芝生エリアに寝転んで空を見上げながら、スクリーンの音だけ聞いている人がいる。ピクニック用のワインを持ち込む人がいる(アルコール持ち込みには一定のルールがある)。試合より「その場にいること」に価値を置いている。

在英日本人の間では「ウィンブルドンは最初の数回は試合を目当てに行くが、慣れてくると芝生でのんびりする目的になる」という声がある。これは英国生活への適応の一形態とも言える。

チケット入手の現実

センターコートのチケットは事前抽選制(Ballot)があり、応募は毎年秋〜冬頃に行われる。抽選に漏れた場合はリセール(公式サイトのResale機能)か当日券を狙うことになる。

当日券を目当てに並ぶ場合、会場のあるウィンブルドン駅(サウスフィールズ駅が最寄り)から徒歩圏の「キューパーク」に早朝から向かう。前日から並ぶなら公式ガイドの指示に従う必要がある。

7月に英国滞在中なら、チケットの有無に関わらず周辺の雰囲気を体験するだけでも価値がある。駅からコートまでの沿道には屋台が並び、街全体がウィンブルドン色になる。ロンドン在住であれば「一度は雰囲気だけ見に行く」という選択肢がある。

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