香港の銀行口座開設ガイド——日本人が口座を作るための条件・書類・銀行選び
香港で銀行口座を開設する日本人向けに、必要書類・審査の注意点・HSBC・恒生銀行など主要銀行の比較を解説。マネロン規制で審査が厳しくなった今、事前準備なしで行くと窓口で断られるケースも。
この記事の日本円換算は、1HKD≒20円で計算しています(2026年3月時点)。為替は変動するので、現地通貨(HKD)の金額を基準にしてください。
香港の銀行口座は、単なる「給料の受け取り先」ではない。
世界の主要通貨をひとつの口座で保有できるマルチカレンシー機能、中国本土との資金移動の容易さ、グローバルな金融商品へのアクセス。香港に住むなら、この金融インフラを使わない手はない。
ただし、口座開設は「行けば開ける」というほど簡単ではなくなっている。マネーロンダリング規制の強化で審査は年々厳しくなっており、必要書類や条件を事前に把握しておかないと、窓口で断られるケースもある。
銀行選びから必要書類、送金、モバイルバンキングまで。香港で口座を持つために知っておくべきことを一通り整理した。
香港で口座を持つメリット
マルチカレンシー口座が標準装備
香港の主要銀行では、ひとつの口座でHKD・USD・JPY・CNY・EUR・GBPなど複数通貨を保有できる。日本の銀行で外貨預金口座を別途開設するような手間がない。
駐在員なら給与はHKDで受け取りつつ、USDやJPYも同じ口座内で管理できる。為替のタイミングを見て通貨間の振替も可能。
中国本土との金融接続
香港の銀行口座があれば、中国本土の銀行口座をリモートで開設できるサービスも広がっている。HSBC・スタンダードチャータード・交通銀行などが対応しており、中国出張が多い人には実用的な選択肢になる。
国際送金のハブとして機能する
香港は資本移動の自由度が高く、海外送金の制限が少ない。日本の銀行からの送金受け取りも、香港から日本への送金も、比較的スムーズに行える。
主要銀行の比較
香港の個人向け銀行口座で日本人が選ぶのは、主にこの4行。
HSBC(香港上海銀行)
香港最大の銀行。ATMの数、支店ネットワーク、オンラインバンキングの使い勝手、どれをとっても最も充実している。香港生活のメインバンクとして選ぶ人が多い。
口座タイプ:
- HSBC One — 最も一般的な総合口座。普通預金・定期預金・投資口座が一体化。最低預入額の設定なし
- HSBC Premier — 富裕層向け。Total Relationship Balance(TRB)HKD 1,000,000(約2,000万円)以上の維持が条件。下回るとHKD 380/月(約7,600円)の手数料が発生
- HSBC Jade — 超富裕層向け。TRB HKD 7,800,000(約1.56億円)以上
ほとんどの日本人駐在員・現地採用者はHSBC Oneで十分。
2026年からの変更点(注意): 2026年1月1日以降に開設されたHSBC One口座で、香港IDカードを持たない口座保有者は、TRBがHKD 10,000(約20万円)を下回るとHKD 100/月(約2,000円)の口座管理手数料が発生する。香港ID保有者や、2025年以前に開設済みの口座は対象外。
恒生銀行(Hang Seng Bank)
HSBCグループの子会社で、香港ローカルに強い銀行。ATMネットワークはHSBCと共有しており、利便性は高い。
特徴:
- 統合口座(Integrated Account)は最低残高手数料なし(2019年8月以降撤廃)
- Preferred Banking(TRB HKD 500,000以上)で優遇サービス
- 定期預金の最低預入額はHKD 10,000〜(期間による)
- 香港ローカル企業との取引が多い場合に便利
HSBCと比べると国際的なネットワークは弱いが、香港国内での日常利用には十分。手数料体系もシンプルで使いやすい。
中国銀行(香港)— Bank of China (Hong Kong)
中国本土との取引が多い人に向いている。普通口座の最低開設残高はHKD 1,000(約2万円)から。
特徴:
- 中国本土への送金手数料が他行より安い傾向
- 人民元(CNY)建ての取引・預金に強い
- 中国本土の銀行口座のリモート開設サービスあり
- BoC Pay(モバイル決済)で中国本土のQRコード決済圏に接続可能
中国出張や中国本土とのビジネスが多い駐在員には、メインバンクまたはサブバンクとして検討する価値がある。
スタンダードチャータード(Standard Chartered)
イギリス系の国際銀行。アジア・アフリカ・中東に強いネットワークを持つ。
特徴:
- HKD普通口座の最低開設残高はHKD 1,000(約2万円)
- 最低残高手数料は2019年に撤廃済み
- Priority Banking(TRB HKD 1,000,000以上)で優遇
- 東南アジアや中東への転勤が見込まれる場合、口座の国際移管がしやすい
複数国をまたいで駐在する可能性がある人には、グローバルネットワークの広さがメリットになる。
主要銀行の比較表
| 項目 | HSBC One | 恒生銀行 | 中国銀行(香港) | スタンダードチャータード |
|---|---|---|---|---|
| 最低開設残高 | なし | なし | HKD 1,000 | HKD 1,000 |
| 最低残高手数料 | なし※ | なし | — | なし |
| マルチカレンシー | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 |
| ATMネットワーク | 最大 | HSBC共有 | 広い | やや少ない |
| 中国本土連携 | あり | あり | 最強 | あり |
※2026年1月以降の新規開設で香港ID非保有者はTRB HKD 10,000未満でHKD 100/月
口座開設の条件と必要書類
香港居住者(就労ビザ・投資ビザ等)の場合
香港で働いている、または居住している人の口座開設に必要な書類は以下の通り。
必要書類:
- 香港IDカード(HKID)— 就労ビザや投資ビザで入境すると取得できる
- パスポート
- 住所証明書類(公共料金の請求書、銀行ステートメント等。直近3ヶ月以内)
- 就労証明(雇用契約書など。銀行によっては求められる)
香港IDカードがあれば、開設はスムーズに進む。HSBC Oneなどはオンラインでの口座開設にも対応しており、アプリから申し込めるケースもある。
非居住者(旅行者・日本在住者)の場合
香港IDカードを持たない非居住者でも、一部の銀行では口座開設が可能。ただし、条件は厳しくなる。
必要書類:
- パスポート
- 日本の住所証明書類(運転免許証、住民票など。英語または中国語の翻訳が必要)
- マイナンバーカードまたはマイナンバーが記載された書類
- 口座開設の目的を説明できること(投資、ビジネス等)
重要な注意点:
- 本人が香港の支店に出向く必要がある(郵送やオンラインのみでは不可)
- 英語または広東語での最低限の意思疎通が求められる(通訳の同伴は銀行によって可否が分かれる)
- 口座開設の目的が不明確だと断られる可能性がある — 「とりあえず開設したい」では審査が通りにくい
- 2026年以降、HSBC Oneは香港ID非保有者にTRB HKD 10,000未満で月額HKD 100の手数料が発生
非居住者の口座開設は年々難しくなっている。口座開設をサポートする専門業者に相談するのもひとつの選択肢。
ケース別:どの順番で動くか
駐在員(会社が手配するケース): 会社の人事部門が銀行と連携して口座開設をアレンジしてくれることが多い。赴任前に必要書類を確認し、到着後すぐに開設手続きに入れるよう準備しておく。
現地採用(自分で開設するケース): 就労ビザと香港IDカードの取得が先。IDカード取得後に銀行窓口へ。住所証明が必要なので、住居の契約も先に済ませておくとスムーズ。
非居住者(投資・資産管理目的): 渡航前に開設したい銀行に直接問い合わせ、必要書類を確認するのが確実。書類の不備で渡航が無駄になるリスクを避けるため、事前準備を念入りに。
口座の種類
普通預金口座(Savings Account)
日常的な入出金に使う口座。金利はほぼゼロに近いが、流動性が高い。HKD以外の通貨も保有可能。
当座預金口座(Current Account)
小切手の発行が必要な場合に開設する。日本ではほぼ絶滅した小切手だが、香港では家賃の支払いに小切手を求める大家がまだ多い。賃貸契約時に「12枚の小切手を先に渡してくれ」と言われることも珍しくないので、賃貸物件に住む予定があるなら当座預金口座の開設を検討しておく価値はある。
定期預金口座(Time Deposit)
まとまった資金を一定期間預ける口座。1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月・12ヶ月などの期間を選べる。金利は普通預金より高く、HKD以外の通貨での定期預金も可能。恒生銀行の場合、最低預入額はHKD 10,000〜。
マルチカレンシー口座
香港の主要銀行の統合口座(Integrated Account)は、標準でマルチカレンシーに対応している。別途開設する必要はなく、口座内でHKD・USD・JPY・CNY・GBP・EUR等を保有・振替できる。
投資口座
証券・ファンド・債券などの金融商品を購入するための口座。統合口座に紐づけて開設する形が一般的。HSBC PremierやHang Seng Preferred Bankingでは、専任のリレーションシップマネージャーが付く。
手数料と最低預入額
口座維持手数料
香港の主要銀行は、2019年以降、一般的な個人口座の最低残高手数料を相次いで撤廃した。HSBC One・恒生銀行・スタンダードチャータードの基本口座は、残高がゼロでも口座維持手数料がかからない。
ただし、上位グレードの口座は条件あり。
| 口座グレード | 銀行 | TRB条件 | 条件未達時の手数料(月額) |
|---|---|---|---|
| HSBC Premier | HSBC | HKD 1,000,000 | HKD 380(約7,600円) |
| Preferred Banking | 恒生銀行 | HKD 500,000 | — |
| Priority Banking | スタンダードチャータード | HKD 1,000,000 | — |
ATM手数料
自行ATMは無料。HSBCと恒生銀行はATMネットワークを共有しているため、どちらのATMでも無料で引き出せる。他行ATMの利用は手数料が発生する場合がある。
海外ATMでの引き出しは、引き出し手数料+為替手数料がかかる。頻繁に海外で現金を引き出す場合は、Wiseなどの国際送金サービスのデビットカードを併用する方がコストを抑えられる。
海外送金——香港と日本の間でお金を動かす
銀行経由の送金
香港→日本: HSBCのインターネットバンキングからの送金手数料は、送金先の国に関係なく一律HKD 50(約1,000円)。窓口で手続きすると HKD 120〜240(約2,400〜4,800円)かかるので、ネットバンキング一択。
ただし、銀行の海外送金には「見えないコスト」がある。銀行独自の為替レート(ミッドマーケットレートに数%上乗せ)が適用されるため、送金手数料だけでは真のコストはわからない。100万円単位の送金だと、為替の上乗せ分だけで数万円の差が出ることもある。
日本→香港: 日本の銀行からの送金手数料は銀行によって異なるが、3,000〜7,500円程度が相場。着金までに2〜5営業日かかる。
国際送金サービスの活用
銀行送金のコストが気になる場合は、Wiseなどの国際送金サービスを検討する価値がある。ミッドマーケットレート(実際の為替レート)で送金でき、手数料も銀行より安いケースが多い。銀行と比べると1回あたり数千円〜数万円の差になることが多く、月1回送金を続けると5年で49万円の差になる計算。
→ 自分の送金額で手数料を試算する(登録不要・無料)
特に毎月の生活費の送金や、日本の家族への仕送りなど、定期的に送金する場合はコスト差が積み上がる。
モバイルバンキングとキャッシュレス決済
香港のキャッシュレス決済は急速に進んでいる。日常生活で押さえておきたいサービスを整理する。
FPS(転数快 / Faster Payment System)
香港金融管理局(HKMA)が運営する即時送金システム。銀行口座や電子ウォレット間で、電話番号やメールアドレスだけで即時に送金できる。手数料は基本的に無料。
- 銀行のアプリから電話番号やメールアドレスを登録するだけで利用可能
- 個人間の送金はほぼリアルタイム
- 飲食店やコンビニでのQRコード決済にも対応
- 1日の送金上限はHKD 10,000(デフォルト設定。変更可能)
日本のPayPayやLINE Payに近い感覚で使える。香港に着いたら早めに設定しておくと便利。
PayMe(by HSBC)
HSBCが運営するP2P送金アプリ。FPSとは別のサービスだが、FPSの受取先としてPayMeアカウントを設定することもできる。
- 友人間の割り勘、個人間送金に広く使われている
- クレジットカードからのチャージも可能(HSBCカードは手数料無料、他行カードは手数料あり)
- 送金上限はHKD 50,000
- 一部の店舗でPayMe決済にも対応
香港の若い世代では、「PayMeして」が「送金して」の意味で使われるほど普及している。
八達通(Octopus)
交通系ICカード。MTR(地下鉄)・バス・フェリーの乗車はもちろん、コンビニ・スーパー・自販機・駐車場など、香港のあらゆる場所で使える。
- Apple Pay / Google Payに追加してスマホで利用可能
- 銀行口座やクレジットカードからの自動チャージ設定が可能
- 交通以外の少額決済にも幅広く対応
- 旅行者用のツーリストOctopusもある
SuicaやICOCAの香港版。生活のインフラとして、口座開設と同時に設定しておきたい。
各銀行のモバイルバンキングアプリ
HSBCのモバイルアプリはFPS送金・口座間振替・定期預金の設定・投資取引まで対応しており、支店に行く必要がほとんどない。恒生銀行・中国銀行(香港)・スタンダードチャータードも同様に、主要な取引はアプリで完結する。
注意点——口座を開設する前に知っておくこと
CRS(共通報告基準)による税務情報の自動交換
香港はCRS(Common Reporting Standard)に参加しており、口座保有者の金融情報は、税務上の居住地国の税務当局に自動的に報告される。
日本の税務上の居住者が香港に銀行口座を持っている場合、口座残高・利子・配当などの情報が日本の国税庁に報告される。脱税目的で海外口座を持っても意味がない、ということ。
ただし、これは制度として正しく機能しているだけであり、合法的に香港で口座を持つこと自体には何の問題もない。確定申告で海外口座の情報を正しく申告していれば、CRSを恐れる必要はない。
口座の休眠・凍結リスク
長期間取引がない口座は「休眠口座(Dormant Account)」として扱われ、一部の機能が制限されたり、最悪の場合は口座が凍結される可能性がある。
特に注意が必要なのは以下のケース。
- 香港を離れた後も口座を維持したい場合 — 定期的に少額でも取引を行い、口座をアクティブに保つ
- 非居住者の口座 — 銀行からの郵便物(住所確認等)に応答しないと、口座が制限される可能性がある
- KYC(本人確認)の更新要求 — 銀行から定期的にKYC情報の更新を求められることがある。無視すると口座が制限される
非居住者の口座維持
香港から日本に帰任した後も口座を維持すること自体は可能。ただし、以下の点に留意する。
- 住所変更を銀行に届け出る(日本の住所に変更)
- CRSにより口座情報は日本の税務当局に報告される
- HSBC Oneの場合、2026年以降の新規開設口座は香港ID非保有者にHKD 100/月の手数料が発生する可能性がある(TRB HKD 10,000未満の場合)
- 銀行からの通知・書類に確実に対応する
言語の壁
口座開設時には英語または広東語での意思疎通が必要。書類はすべて英語または中国語。日本語対応の支店や窓口は基本的にない。
ただし、HSBCや恒生銀行のモバイルアプリ・オンラインバンキングは英語対応なので、開設後の日常利用で言語が問題になることは少ない。開設時のハードルさえ越えれば、あとはアプリで完結する。
まとめ——どの銀行を選ぶか
迷ったら、まずはHSBC Oneで口座を開設するのが無難。ATMの数、アプリの使いやすさ、FPS・PayMeとの連携、すべてにおいて香港で最も便利に使える。
中国本土との取引が多いなら中国銀行(香港)をサブバンクとして持っておくと便利。複数国をまたいだ駐在が見込まれるなら、スタンダードチャータードのグローバルネットワークも検討材料になる。
口座開設に必要なのは、事前の書類準備と、銀行窓口での英語でのコミュニケーション。この2つをクリアできれば、香港の金融インフラは日本人にとって非常に使い勝手が良い。
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