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香港の土地の40%は自然保護区——郊野公園制度が都市を救った逆説

超過密都市のイメージがある香港だが、土地面積の約40%が郊野公園(Country Park)として保護されている。1976年制定の郊野公園条例がどのように機能し、なぜ開発圧力の中で守られてきたかを解説。

2026-04-12
郊野公園自然保護ハイキング環境都市政策香港の自然土地利用

この記事の日本円換算は、1HKD≒20円で計算しています(2026年4月時点)。

香港は過密都市だという印象は正しい。ただし「香港の土地は全部コンクリートで埋まっている」という認識は、数字として間違っている。

香港の総面積1,106㎢のうち、郊野公園(Country Park)・特別地区として保護されている面積は約443㎢——全体の約40%だ。九龍半島の高密度市街地に隠れて見えにくいが、香港の大半は緑の山だ。

郊野公園条例(1976年)

郊野公園条例(Country Parks Ordinance)は1976年に制定された。植民地政府が当時の爆発的な人口増加と都市化の中で、「一定の自然を法律で保護する」と決めた。

法律の内容は明快だ。指定された郊野公園内では、許可なく建物を建てることができない。採掘・採石・木の伐採も禁止だ。政府の許可がなければ変更できない法的保護が、約50年間かけて機能してきた。

なぜ開発圧力に対抗できたか

住宅不足と地価高騰が深刻な香港では「郊野公園を開発して住宅を供給すべき」という議論が繰り返し起きている。2018年には政府内からも郊野公園への住宅開発容認案が出た。

それでも開発が進まない理由は複数ある。

法的障壁: 郊野公園内の開発は条例改正が必要で、政治的に極めて難しい。

環境・社会的コスト: 郊野公園が提供する生態系サービス(洪水リスク低減・水源涵養・都市のヒートアイランド緩和)は数値化が難しいが、失うコストが高い。

市民の反対: 香港市民にとって郊野公園へのハイキング・ウォーキングは週末の文化として定着しており、廃止や縮小への反対が強い。

24のパーク

2024年時点で香港には24の郊野公園がある。有名なものはマクリホーズ・トレイル(MacLehose Trail、全長100km)・ウィルソン・トレイル・ホンコン・トレイルの長距離ハイキングルートを擁するパークだ。

パークの標高は300〜950m台で、香港最高峰の大帽山(Tai Mo Shan)は957mだ。香港島のど真ん中から歩いてアクセスできる太平山(ヴィクトリアピーク、552m)も郊野公園の一部だ。

在住者にとっての郊野公園

香港に住む日本人にとって郊野公園は、日常的なリフレッシュ場所だ。MTRの駅から30〜60分以内で本格的なトレイルに入れる。装備はスニーカーと水分で行ける初級コースから、フルギアが必要な中上級コースまで幅広い。

「都市と自然がこれだけ近い場所はほかにない」というのが長期在住者の共通認識だ。シンガポールの自然公園とは規模もダイナミズムも異なる。香港の自然は、コンクリートとの落差が大きい分だけ印象的だ。

郊野公園が40%を占めるという事実は、香港が「小さな場所に大量の人間が詰まっているだけの都市」ではないことを示している。

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