2025年以降の香港経済——中国との統合と外資の動向
香港の「アジアの金融ハブ」としての地位は今後も続くのか。中国との統合深化・外資の撤退・人材流出という現実と、それでも香港に在住し続ける人たちの視点を整理します。
この記事の日本円換算は、1HKD≒20円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(HKD)の金額を基準にしてください。
「香港はもう終わりだ」という声と「まだ全然機能している」という声が、同じ時期に同じ場所から出てくる。この二つが共存しているという事実が、2025年以降の香港経済の現状を最も正直に表している。
外資の動向:撤退と残留の並立
2020年の国家安全法(国安法)施行以降、香港の政治的・事業的環境は変わった。複数の欧米系金融機関がアジア地域本部を移転、またはシンガポールに分散させた。BBCや一部の国際メディアが香港から撤退した。
しかし全体像は「外資の完全撤退」とは程遠い。香港証券取引所(HKEX)は依然としてアジアで最大規模の取引量を持つ市場の一つだ。中国本土企業のIPOや債券発行において、香港はドル決済・国際的な法体系が使える場所として機能し続けている。
欧米系企業が減った分、中国本土・中東・東南アジア系の企業が香港に拠点を置くケースが増えている。構成が変わったが、金融都市としての機能が一夜にして消えたわけではない。
人材流出と供給の変化
BNO(英国国民海外旅券)を使ったイギリスへの移住が2021年から急増した。高学歴・高所得層の香港人が相当数流出したのは事実だ。
一方、中国本土からの高所得者・起業家が香港の永住権を取得する目的で流入している。GEP(Global Entrepreneurship Program)やOQP(Output-qualified Person)スキームなど、特定スキルを持つ人材・資産を持つ個人の受け入れを積極化する政策が2023年以降に設けられた。
在住日本人の数は2019年頃と比べると減少しているが、金融・法務・会計分野では依然として需要が続いている。「以前より人が少ない」という感覚と「仕事がなくなったわけではない」という現実が共存している。
在住外国人の生活コスト
香港は依然として世界有数の物価が高い都市だ。特に住居費は飛び抜けている。MTR沿線・島側(香港島)の1ベッドルームマンションは月HKD 15,000〜25,000(約30〜50万円)が相場の中心帯。九龍側・新界ならやや安くなる。
物価全般は東京より高いか同水準の項目が多い。ただし外食(茶餐廳:チャーチャンテン等のローカル食堂)は比較的リーズナブルで、一食40〜80HKD(約800〜1,600円)から食べられる。
香港に残る理由
残っている在住日本人に話を聞くと、理由はいくつかの類型に分かれる。中国語(広東語・普通話)スキルと香港のネットワークが差別化になる仕事をしている人。中国本土を含む広義の「グレーターチャイナ」ビジネスに関わる人。もしくはシンプルに「香港の都市としての完成度が好き」という人。
香港の政治的変化を「リスク」と見る人と「変化の過程」と見る人に分かれる。後者は、都市の構造・インフラ・生活の快適さはまだ機能しているという立場だ。どちらが正しいかは、今の時点ではまだわからない。