香港映画の黄金時代と「2021年以降」:失われた何かと新しい何か
ジャッキー・チェン・チョウ・ユンファ・カンフー映画の時代から、現代へ。香港映画産業は縮小しながらも変わり続けている。映画を通じて香港を知る入口を案内する。
この記事の日本円換算は、1HKD≒19.5円で計算しています(2026年5月時点)。為替は変動するので、現地通貨の金額を基準にしてください。
1980〜90年代、香港映画はアジア映画産業の中心だった。ジャッキー・チェンのアクション、ジョン・ウーの弾丸の美学、ウォン・カーウァイの詩的な映像……。これらが世界中の映画ファンに届いた。
あの時代の香港映画は「場所」の力を持っていた。油麻地の路地、ビクトリアハーバーの夜景、屋台の煙……スクリーンに映る香港そのものが魅力だった。
香港映画の黄金期(1980〜1990年代)
この時期、香港はハリウッド・インド(ボリウッド)に次ぐ世界第3位の映画製作地とも言われた(推定)。年間製作本数は多く、ジャンルも多彩だった。
代表的な監督・作品:
- ジョン・ウー(吳宇森): 「男たちの挽歌」「フェイス/オフ」
- ウォン・カーウァイ(王家衛): 「恋する惑星」「2046」
- ジャッキー・チェン(成龍): 「プロジェクトA」「ポリス・ストーリー」
- ツイ・ハーク(徐克): 「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ」
1997年以降の変化
返還後、中国大陸の映画市場が拡大し、多くの香港映画人が大陸向け製作に軸足を移した。香港語(広東語)映画の製作数は減少し、北京語で大陸市場向けに作る作品が増えた。
2021年以降の変化
国安法施行後、一部の映画人・制作者が香港を離れた。政治的に敏感なコンテンツは自主検閲・公開制限の対象になり、映画の内容にも影響が出ているという観察がある。
一方で、香港を舞台にした作品・広東語映画へのこだわりを持つ若い世代の映画人も存在し続けている。
香港映画を体験できる場所
香港映画資料館(香港電影資料館、鯉魚門)
香港映画の歴史資料・アーカイブ映像・旧作上映イベントを行う施設。
Broadway Cinematheque(百老匯電影中心、旺角)
アート系映画・独立映画・クラシック映画を専門に上映する映画館。
香港国際映画祭(HKIFF)
毎年3〜4月に開催。世界各地の映画と香港の作品が上映される。
映画を通じた香港理解
ウォン・カーウァイの「花様年華」(2000年)を観てから九龍の旧市街を歩くと、映画と現実がすり合わさる瞬間がある。映画の香港と実際の香港の「ずれ」を探すことが、この都市を知る楽しみのひとつになる。
黄金期の香港映画は「失われた景色」の記録でもある。今の香港に何が残り、何が変わったのかを考えながら古い作品を観ると、都市の変化の深さが少し見えてくる。