香港からの移民増加——2020年以降に何万人が出国したのか、その背景
2020年の国家安全維持法施行以降、香港では大規模な移民が起きている。出国者の規模・行き先・残留する人の事情まで、在住外国人の視点で整理する。
2020年6月の国家安全維持法(国安法)施行以降、香港の人口動態は大きく変わった。
香港政府統計処のデータによると、2021〜2023年にかけて香港の人口は累計で数十万人規模で純減した。「離港(出国・移住)」が「来港(入国・転入)」を大幅に上回る状況が続いた。これは香港史上でも異例の出来事だ。
主な移住先と規模
最大の受け入れ先となったのはイギリスだ。イギリス政府はBNO(British National Overseas)パスポート保持者とその家族を対象に、5年居住後に市民権申請可能なビザ(BN(O) Visa)を2021年1月に設けた。英国内務省の発表によると、2021〜2023年の3年間で合計約18万件以上のBN(O) Visaが申請・許可された。
カナダ・オーストラリア・台湾も受け入れ先として機能した。カナダは永住権ルート(Express Entry等)を活用した移住、台湾は「特殊人道貢献ビザ」や一般の就労・投資ビザで来る人が増えた。
誰が出国し、誰が残ったのか
出国した層は、英語能力が高く・資産があり・移住先のビザ要件を満たせる人が中心になる。医師・弁護士・会計士・教師などの専門職、中産階級の家族が多いとされる。
残った理由もいくつかある。高齢の両親・香港で確立したビジネス・移住先での就職の難しさ・子どもの学校環境——具体的な理由は人それぞれだが、「出たいが出られない」ではなく「出ることを選ばなかった」人も多い。
外国人在住者への影響
香港に住む外国人(日本人を含む)にとって、このダイナミクスは身近に感じられる。共に働いていたローカルのスタッフが「来月イギリスに引越します」と言って去る経験をした人は少なくない。
人材の流動化は労働市場にも影響を与えた。一部の専門職で人手不足が生じ、香港政府は「人材導入計画(IANG)」などの政策を通じて中国本土・海外からの人材招致を積極化した。このため、2023〜2025年には本土出身の中国人が香港に大量に移入し、街の雰囲気が変化したと感じる長期在住者も多い。
香港の今
大規模な移民が起きた一方で、香港はなおアジアの金融ハブとしての機能を維持している。本土資金の流入・アジア本社機能・国際航空拠点——これらのインフラは短期間で失われるものではない。
ただし、それを支えていた「人」の層が変わったことは事実だ。街の空気は2019年以前と違う。長く住んでいる人ほど、その変化を複雑な感情で受け止めている。
香港に移住・赴任を検討するなら、2020年以降の変化を「知った上で来る」という選択が、居心地の良さにつながると思う。