香港ジョッキークラブ——競馬と慈善活動の二重構造
香港ジョッキークラブ(HKJC)は競馬運営団体であり、香港最大の慈善寄付者でもある。その収益構造・慈善活動の規模・在住者が競馬場で楽しむ方法を解説。
この記事の日本円換算は、1HKD≒20円で計算しています(2026年4月時点)。
香港では、競馬の売上金の一部が病院・学校・社会福祉施設の建設に使われる。これはジョッキークラブという組織の特殊な仕組みによるものだ。競馬が「娯楽」であり同時に「公共インフラの財源」でもある、という構造が香港の社会設計に深く組み込まれている。
HKJC(香港賽馬會)とは
香港ジョッキークラブ(The Hong Kong Jockey Club)は1884年創立の非営利組織で、香港における競馬・競馬の馬券・スポーツくじ(フットボール賭博含む)の独占的運営権を持つ(出典:HKJC公式サイト)。
競馬場は沙田(シャティン)競馬場と跑馬地(ハッピーバレー)競馬場の2箇所。沙田は郊外型で収容人数が大きく、跑馬地は市街地のど真ん中にあり、夜間レースが特徴的だ。
収益と慈善の規模
HKJCは香港政府に対して毎年多額の税・賦課金を納付している。それに加えて、クラブ自身の「The Hong Kong Jockey Club Charities Trust」を通じた慈善寄付の総額は過去10年で累計数百億香港ドル規模に達するとされている(出典:HKJC Charities Trust公式年次報告)。具体的には病院設備・高齢者施設・青少年センター・スポーツ施設の建設・運営資金として使われている。
在住者の目に見えるところでは、HKJCの名前を冠した施設(香港ジョッキークラブ・クリニック等)がMTR駅周辺や市区に複数存在する。
在住者が競馬を楽しむ方法
競馬観戦はHKJC会員でなくても可能だ。跑馬地の夜間レース(主に水曜夜)は在住外国人に特に人気がある。理由は「市街地のビルに囲まれたトラックで夜に競馬を見る」というシチュエーション自体の面白さだ。
入場料は一般席10HKD(200円)と安い。馬券はSGD最低10HKD(200円)から購入可能。まず見るだけという選択もある。
注意点として、身分証明書の提示が必要で、未成年は入場できない。外国人でも香港ID(外国人はYour IDカード)か旅券の提示で入場できる(出典:HKJC公式ガイド)。
「上流クラブ」としての顔
競馬場とは別に、HKJCは会員制の高級クラブ施設を香港各地に持っており、ゴルフコース・レストラン・スポーツ施設を会員が利用できる。会員権の入会金・年会費は相応に高額で、一般の在住者が気軽に入れる場所ではない。
競馬場の一般席と会員専用ラウンジが同じ施設に共存する、という構図は「香港の階層的な社会」の縮図のようでもある。水曜夜、跑馬地の外野席でビールを片手にレースを見ていると、そのコントラストが妙にリアルに感じられる。