香港の埋立地は、あと数年で満杯になる
人口750万人が出すゴミの大半が埋め立てられている香港。リサイクル率は約30%で、残りは3カ所の埋立地に運ばれる。その埋立地が数年以内に容量の限界を迎える。
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香港の新界に3カ所ある埋立地は、毎日約11,000トンの都市廃棄物を受け入れている。年間約400万トン。そしてこの3カ所の埋立地は、現在の投入ペースでは2030年代前半に容量の限界に達するとされている(環境保護署、2023年)。
750万人の街が出すゴミの行き先が、あと数年で消える。
3カ所の埋立地
香港には現在稼働中の埋立地が3カ所ある。
| 名称 | 所在地 | 開設年 | 受入量(日量) |
|---|---|---|---|
| 新界東北埋立地(NENT) | 打鼓嶺 | 1995年 | 約2,500トン |
| 新界東南埋立地(SENT) | 将軍澳 | 1994年 | 約3,500トン |
| 新界西埋立地(WENT) | 屯門 | 1993年 | 約5,000トン |
3カ所とも30年以上稼働しており、当初の設計容量を超えて拡張工事が行われてきた。だが拡張にも限界がある。特にSENT(将軍澳)は周辺が住宅地として開発されたため、悪臭と汚染水の問題で住民との対立が続いている。
リサイクル率30%の壁
香港のリサイクル率は約30%(環境保護署、2023年統計)。日本のリサイクル率が約20%(環境省、2023年度)であることと比べると、数字上は香港の方が高い。
だが内訳を見ると構造が違う。香港の「リサイクル」の大部分は、建設廃棄物(コンクリート・鉄筋等)の再利用だ。家庭から出る生活ゴミのリサイクル率は、実質的には10%程度にとどまるとされる。
家庭ゴミのリサイクルが進まない理由はいくつかある。
分別の習慣がない: 香港の住宅には分別ゴミ箱がないケースが多い。マンションのゴミステーション(垃圾房)に1つのシューターがあり、全てのゴミが混合で投入される。
回収インフラの不足: 街中にリサイクルボックス(青=紙、黄=缶・ペットボトル、茶=プラスチック)が設置されているが、回収頻度が低く、溢れていることが多い。
輸出依存: かつて香港はリサイクル資源の大部分を中国大陸に輸出していた。2018年に中国が「国門利剣」作戦でリサイクル資源の輸入を制限し、香港のリサイクルルートが崩壊した。
ゴミ有料化の迷走
香港政府は家庭ゴミの有料化(都市固体廃物收費)を長年検討してきた。法案は2021年に立法会で可決されたが、施行が何度も延期されている。
有料化の仕組みは、政府指定のゴミ袋を購入してゴミを出す方式。袋のサイズは3L〜100Lで、価格は1枚HKD 0.3〜11(約6〜220円)。日本の多くの自治体が採用している方式に近い。
だが、施行は2024年4月に予定されていたものが延期、その後も延期が続いている。住民の反発、準備不足、経済状況への配慮——理由は複数挙げられているが、政治的に難しい施策であることは間違いない。
焼却炉: T・PARK
香港には大規模な焼却施設が1カ所稼働している。T・PARK(源・区)は2016年に稼働した汚泥処理施設で、下水処理から出る汚泥を焼却処理している。一般廃棄物の焼却施設は、石鼓洲(Shek Kwu Chau)に建設中で、2025年〜2026年に稼働予定だ。
日本では一般廃棄物の約80%が焼却処理されるが、香港は歴史的に埋め立てに依存してきた。焼却施設の建設は住民の反対が強く、「ダイオキシン」「大気汚染」への懸念がある。だが埋立地が満杯になる前に、代替処理の手段を確保しなければならない。
日本人が感じるギャップ
日本からの移住者が香港のゴミ事情で驚くのは、分別の少なさだ。日本で「燃えるゴミ」「燃えないゴミ」「プラスチック」「ペットボトル」「缶」「瓶」「紙」と7分別に慣れた人が、香港で「全部1つのシューターに入れる」生活に移行すると、最初は罪悪感を覚えることがある。
逆に、日本の細かい分別ルールに苦労していた人にとっては、香港のゴミ事情は楽だと感じるかもしれない。
ただし、「楽だ」と感じている裏側で、新界の埋立地が毎日11,000トンのゴミを飲み込み続けている。その行き先がなくなるのは、そう遠い将来ではない。
住む場所としてのインパクト
住む場所を選ぶ際、埋立地との距離は意外に重要だ。将軍澳エリアはSENT埋立地に近く、風向きによっては臭気が住宅地に届くことがある。同エリアの家賃がMTR沿線の他のエリアに比べてやや安い一因とされる。
香港は面積が1,114㎢と東京都の約半分。その中に750万人が住み、毎日11,000トンのゴミを出している。ゴミと人の距離は、東京よりもはるかに近い。