Kaigaijin
海外在住日本人のメディア
文化・社会構造の分析

旧正月前の香港:街が一変する2週間の記録

旧正月前の香港は、花市・大掃除・帰省ラッシュ・店の一斉休業で都市の様相が変わる。外国人が初めてこの時期を過ごすと、香港という都市の「別の顔」に気づく。

2026-07-31
旧正月春節文化行事食文化

この記事の日本円換算は、1HKD≒19.5円で計算しています(2026年5月時点)。為替は変動するので、現地通貨の金額を基準にしてください。

旧正月(春節)の2週間前から、香港の街は変わり始める。MTRの広告が一斉に金色・赤色に切り替わり、商店街に花売りが並び始め、スーパーには「賀年食品」コーナーが出現する。

この時期だけ現れる香港の顔がある。

花市(花卉市場)

旧正月前に香港各地で開かれる露天の花市は、香港の正月文化の象徴だ。ビクトリアパーク(銅鑼灣)の花市が最も大規模で、梅・水仙・桃の花・蘭などが並ぶ。

「花を飾ると縁起がいい」という広東文化の習慣から、家庭・オフィスに花を持ち込むことが盛んになる。桃の花は愛縁・良縁の象徴とされる。

花市は旧正月前の数日間のみ開催され、最終日の深夜には売れ残りの花が安値で叩き売られる光景がある。

年末の大掃除文化

旧正月前には家全体を大掃除する習慣がある。広東語で「打茘衣(ダーライ)」と呼ばれるこの習慣は、古い年の不運・厄を払い清めるという意味を持つ。

香港では家政婦(フィリピン人家政婦を雇っている家庭が多い)への年末のボーナス支払いも旧正月前後に行われることが多く、経済的な動きとも連動している。

お年玉(利是・ライシー)の文化

香港の正月の最重要文化の一つが「利是(ライシー)」だ。日本のお年玉に相当するが、渡す相手・金額感が少し異なる。

既婚者が未婚者・子どもに渡す。金額は少額でよく、5〜20HKD(100〜390円)程度の小さな赤い封筒が基本だ。会社でも上司から部下への利是渡しが行われる。渡す封筒(利是封)の柄は縁起の良いデザインのものが使われ、銀行・大企業が記念品として配布することも多い。

旧正月期間中の生活

旧正月の3日間(元日・初二・初三)は多くの店が休業する。外食も限られ、香港に住む外国人が「何も開いていない」と戸惑うことがある。

この時期は地元の家族は親戚宅を巡り、食事をするのが伝統。外国人が食事に困らないために、旧正月前にある程度の食材を確保しておくのは実用的な知恵だ。

縁起の良い食べ物

旧正月に食べる伝統食がある:

  • 蘿蔔糕(ラウバッゴウ): 大根餅。ウェットマーケットや茶餐廳で見かける
  • 年糕(ニエンガオ): 餅米のケーキ。「年年高昇(毎年向上する)」の語呂合わせ
  • 発菜(ファッチョイ): 藻の一種。「発財(金持ちになる)」の語呂合わせ

旧正月後の花火と灯籠

香港の旧正月には、ビクトリアハーバーで花火が打ち上げられる年もある(開催は年によって異なる)。元宵節(旧暦1月15日)には灯籠を飾る習慣もあり、正月の行事は旧暦15日頃まで続く。


旧正月の香港を経験すると、普段は背景に退いている広東文化の骨格が前に出てくる。「香港は中国ではない」と言う人も、旧正月の準備の仕方だけは大陸と共通している。その重なりと違いを観察することが、この都市を理解する入口になる。

コメント

読み込み中...