香港を離れるときMPFはどうなるか——強制積立年金の出口戦略
香港で働くと自動的に加入するMPF(強制積立年金)。退職・帰国時に引き出せるのか、条件は何か、税金はかかるのか。出口の設計を事前に知っておく必要がある。
この記事の日本円換算は、1HKD≒20円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(HKD)の金額を基準にしてください。
香港で働く全ての18〜64歳の従業員と雇用主は、MPF(Mandatory Provident Fund、強制性公積金)への拠出が義務付けられている。給与の5%を従業員が、5%を雇用主が拠出する。上限はHKD 1,500/月(約30,000円)ずつ。
問題は、このお金をいつ・どうやって取り出せるのか、だ。
原則: 65歳まで引き出せない
MPFの原則ルールは「65歳に達するまで引き出し不可」。これは香港人も外国人も同じだ。20代で香港に来て30代で帰国する場合、積み立てた資金が30年以上ロックされる計算になる。
例外: 早期引き出しが認められるケース
以下の条件に該当する場合、65歳前でもMPFを引き出せる(MPFA=強制性公積金計画管理局の公式ガイドラインに基づく)。
1. 永久的に香港を離れる場合 最も多くの外国人が使うルートだ。「永久的に香港を離れる」という法定声明書(Statutory Declaration)を提出し、MPF受託者(トラスティー)に申請する。
条件:
- 香港のIDカードを返還する意思があること(実務上は返還しなくても申請は通るケースがある)
- この理由での引き出しは一生に1回のみ。つまり、一度香港を離れてMPFを全額引き出した後に再び香港に戻って働いても、次回は同じ理由で引き出せない
2. 60歳で早期退職する場合 60歳以上で退職した場合は引き出し可能。
3. 完全な障害 業務能力を完全に失った場合。
4. 口座残高がHKD 5,000以下で13ヶ月以上拠出がない場合(少額残高ルール) 短期間だけ香港で働いた場合に該当しうる。
手続きの実際
「永久的に香港を離れる」理由でMPFを引き出す場合の手順:
- MPF受託者(HSBC、AIA、Manulife等)に連絡し、引き出し申請書を取得
- 法定声明書を作成し、宣誓署(Commissioner for Oaths)で宣誓。弁護士事務所でも可(費用HKD 100〜500、約2,000〜10,000円)
- パスポートのコピー、香港を離れることを示す書類(航空券、他国のビザ等)を添付
- 申請から支払いまで通常30日以内
税金の扱い
MPFの引き出しには香港側での課税はない(MPF条例により非課税)。
だが日本に帰国する場合、日本側での課税が問題になる。日本の所得税法上、海外年金の一時金受取は「一時所得」として課税される可能性がある。金額が大きい場合は日本の税理士に相談する方がいい。
運用先の選択を忘れない
MPFは拠出するだけでなく、運用先ファンドを自分で選べる。デフォルトのまま放置している人も多いが、運用パフォーマンスはファンドによって大きく異なる。
MPFAのウェブサイト(mpfa.org.hk)で全ファンドの過去パフォーマンスを比較できる。香港を離れるまでの期間が短い場合は保守的なファンド(マネーマーケット系)に移し、長期なら株式比率の高いファンドを選ぶ——という判断は、普通の投資と変わらない。
MPFは「給与から天引きされているが、いつ戻ってくるのかわからないお金」になりがちだ。出口戦略を入口の段階で設計しておくと、香港を離れるときの手続きがスムーズになる。