香港の税金ガイド——実効15%以下の薄利課税とMPFの仕組み、日本との二重課税処理
香港のサラリーズタックス(2〜17%累進 or 15%標準税率選択)・キャピタルゲイン税なし・MPF拠出のTax Relief・日香租税条約なしの場合の日本の外国税額控除まで解説。
この記事の日本円換算は、1HKD≒20円で計算しています(2026年3月時点)。為替は変動するので、現地通貨(HKD)の金額を基準にしてください。
「香港の税金は安い」——これは事実だが、もう少し正確に言うと「構造がシンプルで、かつ最高税率が低い」。
所得税(サラリーズタックス)の標準税率は15%。累進税率でも最高17%止まり。キャピタルゲイン税・消費税・相続税がない。これだけで日本との差は明らか。
ただし「日香租税条約がない」ことが、日本側の処理で引っかかりになる。仕組みを理解して対応する。
サラリーズタックス(薪俸稅)
香港の個人所得税は「サラリーズタックス(Salaries Tax)」として給与・賃金に課税される。
累進税率
| 課税所得(HKD) | 税率 |
|---|---|
| 50,000 以下 | 2% |
| 50,001〜100,000 | 6% |
| 100,001〜150,000 | 10% |
| 150,001〜200,000 | 14% |
| 200,001 以上 | 17% |
※ 課税所得は「Net Chargeable Income(課税可能純所得)」で計算。各種控除後の額。
標準税率(Standard Rate)
累進税率の代わりに、全課税所得に**一律15%**を適用する「標準税率」を選択できる。
高所得者の場合、累進税率だと最高17%になるが、標準税率を選択すれば実効税率が15%に抑えられる。申告時に自動的に有利な方が適用される(選択不要で両方計算し低い方を採用する仕組み)。
個人事業・フリーランス(プロフィッツタックス)
香港で事業を行う個人(個人事業主)には「プロフィッツタックス(Profits Tax)」が適用される。税率は15%(法人は16.5%)。
税の対象外——香港の「ない税金」
これが香港の税制の大きな特徴。
| 税の種類 | 香港での有無 |
|---|---|
| キャピタルゲイン税 | なし |
| 相続税(遺産税) | なし(2006年に廃止) |
| 消費税(VAT/GST) | なし |
| 配当所得税 | なし(受取配当は非課税) |
| 利子所得税 | なし(個人の預金利息は非課税) |
株式・不動産・投資信託で得たキャピタルゲインは非課税。これが香港を投資の集積地にしている理由の一つ。
MPF拠出とTax Relief
MPF(強制退職積立制度)の従業員拠出分は、サラリーズタックスの控除対象になる。
| 内容 | 上限 |
|---|---|
| MPF従業員拠出分のTax Relief | HKD 18,000/年(2024/25課税年度) |
月 HKD 1,500 × 12ヶ月 = 年間 HKD 18,000 が上限(拠出上限と一致)。強制拠出の全額が控除できる計算。
主な控除項目
| 控除種別 | 2024/25年度の控除額目安 |
|---|---|
| 基本控除(Basic Allowance) | HKD 132,000 |
| 配偶者控除(Married Person's Allowance) | HKD 264,000 |
| 子ども控除(Child Allowance、1人目) | HKD 130,000(高等教育中は HKD 260,000) |
| 高齢親族扶養控除 | HKD 50,000〜100,000(条件あり) |
| MPF拠出(Tax Relief) | 最大 HKD 18,000 |
| 住宅ローン利息 | 最大 HKD 100,000/年(最長20年間) |
申告スケジュール
香港のサラリーズタックスは、原則として個人申告制。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 毎年5〜6月 | 税務局(Inland Revenue Department: IRD)が個人に申告書(Tax Return)を郵送 |
| 受取後 1ヶ月以内 | 申告書を提出( IRDe-Tax または郵送) |
源泉徴収はない: 日本と異なり、給与から毎月自動的に税金が引かれない(MPF以外)。年次申告で精算する。
日本との二重課税処理
日香租税条約は存在しない。日本と香港の間には二重課税防止条約が締結されていない(2026年4月時点)。
ただし、日本の国内法(所得税法)に「外国税額控除」の規定があり、香港で支払ったサラリーズタックスを日本の所得税から控除できる。
日本での申告が必要なケース
| ケース | 対応 |
|---|---|
| 香港の給与のみ(日本に不動産収入等なし) | 日本では非居住者扱い。国内源泉所得がなければ申告不要 |
| 日本に不動産収入・株式配当等がある | 国内源泉所得として日本で申告。外国税額控除で調整 |
| 帰国した年 | 全世界所得を日本で精算。香港で払ったサラリーズタックスは外国税額控除で控除 |
外国税額控除の申告(日本での手続き)
- 日本の確定申告書(確定申告書B)を作成
- 「外国税額控除に関する明細書」(別表)に香港での納税額を記入
- 控除限度額(日本税額 × 香港所得 / 全世界所得)との比較で控除可能額を計算
香港での申告の実務
会社員は通常、会社の経理担当が「IR56B(雇用主の申告書)」を税務局に提出する。個人は税務局から郵送されてくる申告書(個別申告書)に記入して返送。
初年度は香港税務局の「eTAX」(www.gov.hk/en/residents/taxes/etax)でオンライン登録を済ませると、翌年以降の管理が楽になる。
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