街市の2階は食堂だった——香港のウェットマーケット熟食中心という隠れたインフラ
香港の公営街市(ウェットマーケット)には熟食中心(フードコート)が併設されている場所があります。地元民の食堂として機能する熟食中心の使い方と魅力を紹介。
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香港のウェットマーケット(街市)は1階が生鮮売り場。肉、魚、野菜、豆腐。床は水で濡れていて、独特の匂いが漂う。観光客はここで引き返す。
しかし階段を上がると、全く違う空間がある。熟食中心(Cooked Food Centre)——地元民の食堂だ。
熟食中心とは何か
香港政府の食物環境衛生署(FEHD)が管理する公営フードコート。街市の上層階に併設されているケースが多く、5〜15の小さな食堂が入っている。エアコンはないか、あっても効きが弱い。蛍光灯にプラスチックの椅子。装飾は一切ない。
メニューは店ごとに異なるが、叉焼飯(チャーシュー丼)30〜45HKD(約600〜900円)、雲呑麵(ワンタン麺)35〜50HKD(約700〜1,000円)、煲仔飯(土鍋ご飯)50〜80HKD(約1,000〜1,600円)程度。チェーンレストランの半額近い。
なぜ安いのか
理由は家賃だ。熟食中心のテナント料はFEHDが設定しており、民間の商業施設より大幅に安い。最低落札価格が月額数千HKDで、中環(セントラル)のレストランが払う数十万HKDの家賃とは桁が違う。
この「公営」という仕組みが、香港の庶民の食費を支えてきた。マクドナルドのセットが50HKD(約1,000円)を超える香港で、40HKDで腹いっぱい食べられる場所は貴重だ。
おすすめの熟食中心
在住日本人にも使いやすい場所をいくつか挙げる。
- 灣仔街市(Wan Chai Market): 2階の熟食中心は広く、粥、麺、焼味(ロースト肉)が揃う。MTR灣仔駅から徒歩3分
- 大埔墟街市(Tai Po Hui Market): 新界エリア最大級の街市。2階の熟食中心では海鮮を1階で買って調理してもらう「來料加工」が可能
- 鵝頸街市(Bowrington Road Market): 銅鑼灣の裏手にある。観光客がほぼいない穴場。小さいが味のレベルが高い
使い方のコツ
熟食中心には暗黙のルールがある。
まず席を先に確保する。混雑時はティッシュやカバンを置いて「取り置き」するのが香港流だ(盗まれるリスクは低い)。席を確保したら店のカウンターで注文し、番号を呼ばれたら取りに行く。
広東語が話せなくても、メニューの番号を指差せば通じる。多くの店には写真付きメニューがある。支払いは現金かオクトパスカード。クレジットカードはまず使えない。
衛生面の実態
衛生グレードはFEHDが「A」「B」「C」で評価し、入口に掲示されている。Aグレードの店を選べば、衛生基準は商業レストランと同等。ただしCグレードや評価未掲示の店は避けたほうが無難だ。
熟食中心は「安い、早い、うまい」を全て満たす場所。在住初期に近所の街市を探索すると、生活コストが一気に下がる。