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ワンタン麺のミシュラン——HKD 40の一杯が星を獲る街の食の論理

香港のワンタン麺(雲呑麺)文化とミシュランの関係を解説。B級グルメがなぜ星を獲るのか、竹打ち麺の製法、エビワンタンの基準、在住者が通うローカル店の特徴と価格帯まで。

2026-05-07
ワンタン麺ミシュランB級グルメ広東料理

この記事の日本円換算は、1HKD≒20円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(HKD)の金額を基準にしてください。

HKD 40(約800円)のワンタン麺がミシュランの星を持つ。東京では考えにくいことが、香港では起きています。

香港のミシュランガイドには「ストリートフード」カテゴリがあり、ローカルの食堂(大排檔)や路面の小さな店が星やビブグルマンに選ばれている。ワンタン麺はその代表格です。

香港のワンタン麺とは

香港のワンタン麺(雲呑麵、ワンタンミン)は、広東料理の一角を占める麺料理です。日本で食べるワンタンメンとは似て非なるもの。

特徴は3つ。

  1. : アヒルの卵を使った「竹昇麺(ジュッサンミン)」。竹の棒に跨って体重で生地を延ばす伝統的な製法。コシが強く、独特の食感がある
  2. ワンタン: エビがメイン。豚肉はつなぎ程度。プリッとした歯ごたえで、エビの鮮度がダイレクトに味に出る
  3. スープ: 大地魚(干しヒラメ)・エビの殻・豚骨をベースにした琥珀色の透明なスープ

日本のワンタンメンが豚肉餡のワンタン+鶏ガラ or 醤油スープなのに対し、香港版はエビが主役で、スープの素材もまったく異なります。

ミシュランとローカル食堂

ミシュランが香港版を開始した2009年以降、何軒かのワンタン麺店がビブグルマン(コスパの良い料理に与えられる評価)や1つ星を獲得しています。

価格帯店のタイプ雰囲気
HKD 30〜50(約600〜1,000円)路面のローカル店相席当たり前、メニュー3〜5品
HKD 50〜80(約1,000〜1,600円)中級店テーブル席あり、清潔感あり
HKD 80〜150(約1,600〜3,000円)ミシュラン掲載店内装にこだわり、観光客も多い

面白いのは、ミシュランに掲載された後も値段をほとんど上げない店があること。「HKD 40の一杯で星を獲る」という事実そのものが店の誇りになっており、値上げは「安くてうまい」というアイデンティティの否定になるからです。

竹昇麺の職人が減っている

伝統的な竹昇麺の製法——太い竹の棒に跨り、体重をかけて生地を数百回延ばす——は重労働で、習得に何年もかかります。現在、この製法を維持している店は香港全体で数十軒程度とされています。

多くの店は機械製麺に移行しており、竹昇麺の食感を知らない若い世代も増えている。「本物の竹昇麺を出す店」はそれだけで希少価値があり、わざわざ足を運ぶ理由になります。

在住者が通う基準

ワンタン麺の善し悪しを見分けるポイントは、地元民の間では明快です。

  • エビの大きさと鮮度: ワンタンを噛んだ時のプリッとした弾力。冷凍エビだとこれが出ない
  • 麺の歯ごたえ: アルデンテ感があるか。柔らかすぎる麺は論外とされる
  • スープの濁り: 透明であること。濁っているスープは素材か火加減に問題がある

HKD 40程度で、これらの基準を満たす店がまだ香港には残っています。ランチに食べて、晩御飯に別の店でまた食べる——ワンタン麺はそういう軽さで日常に溶け込む料理です。

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