アンコットは非公式な公共交通機関だった——インドネシアの乗合ミニバスが示す都市の論理
インドネシアのアンコット(angkot)は行政が管理しきれないルートを民間が埋める非公式インフラ。運行ルール、料金、TransJakartaとの関係を解説。
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ジャカルタの路上で、窓を開け放した小さなバンが低速で走っている。車体にはルート番号が手書きされている。助手が身を乗り出して「マンガドゥア!マンガドゥア!」と叫んでいる。これがアンコット(angkot)——インドネシアの乗合ミニバスだ。
時刻表はない。バス停もない。手を挙げればどこでも止まる。
アンコットの仕組み
アンコットは個人オーナーが車両を所有し、運転手が1日いくらで車を借りて運行するという構造だ。運転手の収入は乗客数に比例する。だから客を拾うために低速走行し、満席になるまで出発しない。
料金は距離にかかわらずIDR 4,000〜5,000(約38〜48円)程度。正規の料金表はあるが、交渉で決まることも多い。外国人が乗ると高めに言われることがあるので、乗車前に周りの乗客に相場を確認するのが賢い。
TransJakartaとの共存
2004年に運行を開始したTransJakarta(BRT)は専用レーンを持つ近代的なバスシステムだ。料金はIDR 3,500(約33円)の均一運賃で、ICカード(Flazz等)で支払う。
TransJakartaが幹線を、アンコットが枝線を担う——というのが建前だが、実態はもっと混沌としている。同じルートを走るアンコットとTransJakartaが客を奪い合い、アンコットがBRT専用レーンに侵入することもある。
ジャカルタ州政府はアンコットの段階的廃止を進めているが、TransJakartaのルートがカバーしきれない住宅街の「ラストワンマイル」にはアンコットが不可欠で、完全廃止には至っていない。
バンドン・スラバヤのアンコット
アンコットはジャカルタだけの乗り物ではない。バンドンやスラバヤでは今もアンコットが主要な公共交通手段だ。バンドンのアンコットはルート表示がカラーコードで分かれており、車体の色でどこに行くかが分かる仕組みになっている。
スラバヤではアンコットに加えて「bemo」と呼ばれる三輪バスも走っている。これもアンコットと同じ非公式インフラの一種だ。
外国人が乗るときの注意点
ドアが開いたまま走る(というかドアが外されている)車両がある。走行中に乗り降りする地元の人もいるが、外国人が真似をする必要はない。完全に停車してから乗り降りする。
降りたいときは車体を叩くか「Kiri!(左!)」と声をかける。料金は降車時に支払う。おつりが来ないことがあるので、小額紙幣を用意しておく。
Grabのバイクタクシーが普及した現在、アンコットを日常的に使う外国人は少ない。だが、IDR 5,000で街の空気を浴びながら移動する体験は、Grabのエアコン車からは得られないものがある。