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汚職は「悪」だが「日常」でもある——インドネシアで「お礼」が機能する仕組み

インドネシアは汚職認識指数(CPI)で中位の国だ。でも汚職は遠い話ではなく、運転免許の更新から営業許可まで、日常の行政手続きに影を落とす。その仕組みと変化を整理する。

2026-06-29
汚職行政ビジネス環境インドネシア社会

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「スムーズに終わりたければ、少し用意しておくといいよ」——インドネシアのお役所手続きを前に、先輩駐在員から耳打ちされることがある。

汚職はインドネシアにとって長年の課題だ。でも「汚職国家」と単純にラベルを貼っても、現実は見えない。

数字で見る位置づけ

トランスペアレンシー・インターナショナルが毎年発表する汚職認識指数(CPI)で、インドネシアは100点満点中30〜40点前後に位置している(2020年代の値)。これは「かなり腐敗している」と「それほど腐敗していない」の中間あたりだ。

日本は70点以上、シンガポールは80点以上。タイや中国とは近い水準だ。スコアの変化を見ると、インドネシアは2000年代初頭より緩やかに改善している。

なぜ汚職が起きるか

「公務員の給与が低い」は古典的な説明だ。地方公務員の基本給は数百万ルピア/月程度のことがあり(地域・役職による)、それだけでは生活が成り立たない場合がある。不足分を「非公式な報酬」で補う構造が根づいてきた。

行政手続きの不透明さも要因だ。許認可の基準が不明確で、担当者の裁量が大きい。「早くしてほしければ」という交渉が生まれやすい環境がある。

KPK(汚職撲滅委員会)の役割

インドネシアには2002年に設立されたKPK(Komisi Pemberantasan Korupsi)という汚職撲滅専門機関がある。大臣・議員・警察官・裁判官まで含む高官の逮捕を何度も手がけ、国民からの信頼を集めてきた。

しかし2019年の法改正でKPKの権限が制限され、独立性が損なわれたとの批判が研究者・市民団体から出ている。KPKは依然として機能しているが、その存在感は変化している。

外国企業と「グレーゾーン」

外資系企業にとって、インドネシアのグレーゾーンは頭痛の種だ。日本の親会社の規程で「いかなる支払いも禁止」としていても、現地では「慣習」として処理を求められるケースがある。

対応方法は企業によって異なる。弁護士や許認可エージェントを使って正規の手続きを貫く企業、局面ごとに判断する企業、様々だ。日本の外国公務員贈賄罪(不正競争防止法)も適用されうるため、日系企業は慎重になる。

変化の兆し

電子政府の進展が汚職の温床を縮小しつつある。許認可申請のオンライン化、支払いのデジタル化が進むことで「担当者との個別交渉」の機会が減っている。

「昔ほどではなくなった」という声を聞く一方で「まだある」という話も聞く。インドネシアの汚職は消えてはいないが、ゆっくりと変わっている。

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