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パーム油が森を食べている——インドネシアの森林消失と日本の食卓の関係

世界の約半分を供給するインドネシアのパーム油産業。森林消失の実態、日本の食品との関係、持続可能性への取り組みを解説します。

2026-05-02
パーム油森林破壊環境食品

この記事の日本円換算は、10,000IDR≒95円で計算しています(2026年4月時点)。為替は変動するので、現地通貨(IDR)の金額を基準にしてください。

日本のコンビニで売られているカップ麺、菓子パン、チョコレート、洗剤。原材料表示に「植物油脂」と書かれていたら、高い確率でパーム油が使われている。そのパーム油の半分以上は、インドネシアから来ている。

数字で見るパーム油大国

インドネシアは世界のパーム油供給量の約53%を占める最大の生産国だ(次点はマレーシアで約30%)。アブラヤシ(oil palm)のプランテーションは主にスマトラ島とカリマンタン島(ボルネオ島のインドネシア側)に広がり、国土の約7%に相当する面積を占めている。

パーム油は効率の良い作物だ。単位面積あたりの油脂生産量は大豆油の5〜10倍。つまり他の油に切り替えれば、さらに大量の農地が必要になる。問題は「どこに農地を作ったか」だ。

森林消失の実態

2024年、産業用アブラヤシプランテーションの拡張面積は約11.7万ヘクタール。うち約3.1万ヘクタールが森林の転換によるものだった(Nusantara Atlas)。ピークだった2008〜2012年の年間約18万ヘクタールと比べると大幅に減少しているが、ゼロにはなっていない。

2025年のデータではさらに懸念すべき傾向がある。全体の森林転換面積は前年とほぼ横ばいだったが、パプア地域での森林消失が倍増し、7,333ヘクタールに達した。カリマンタンやスマトラで規制が強まった結果、開発のフロンティアが東へ移動している構図だ。

消失するのは森だけではない。泥炭地(ピートランド)の破壊も深刻で、2024年に約1万ヘクタールの泥炭地がプランテーションに転換された。泥炭地は大量の炭素を蓄積しており、排水・開墾すると何十年にもわたってCO2を放出し続ける。

生態系への影響

カリマンタンのボルネオオランウータンは、生息地の減少により絶滅危惧種に指定されている(IUCN レッドリスト: Critically Endangered)。スマトラトラ、スマトラゾウ、スマトラサイも同様だ。

森林の単一プランテーションへの転換は生物多様性を劇的に減少させる。熱帯雨林1ヘクタールに数百種の樹木が生育していた場所に、アブラヤシ1種だけが植えられる。

日本との接点

日本はインドネシアからパーム油を輸入している主要国のひとつだ。2018年時点で、日本のパーム油輸入のうちインドネシア産は約40%(マレーシア産が約59%)。

日本の消費者がパーム油に触れている場面は広い。食用油・マーガリン・菓子・即席麺・パン・アイスクリーム・化粧品・石鹸・洗剤——生活のあらゆる場面にパーム油が入り込んでいる。「植物油脂」「植物性油脂」「パーム核油」等の表示がそれだ。

持続可能なパーム油(RSPO)

RSPO(Roundtable on Sustainable Palm Oil)は、環境・社会に配慮したパーム油の認証制度だ。森林破壊禁止(No Deforestation)、泥炭地開発禁止(No Peat)、搾取禁止(No Exploitation)の原則を掲げている。

ただし、RSPO認証パーム油は世界の生産量の約20%にとどまり、認証を取得していないプランテーションの方がはるかに多い。日本の食品メーカーでRSPO認証油を使用している企業はまだ限られている。

インドネシア在住者として

スーパーで買い物をすれば「Minyak Kelapa Sawit」(パーム油)と書かれた製品が並んでいる。食用油の大半がパーム油で、1リットルあたり15,000〜25,000IDR(約142〜237円)と安い。

プランテーション地帯を車で走ると、見渡す限りのアブラヤシ林が続く。整然と並ぶ木々は壮観だが、それがかつて熱帯雨林だった場所だと知ると、見え方が変わる。

パーム油産業はインドネシアのGDPの約4%を占め、数百万人の雇用を支えている。「環境のために廃止すべき」と外から言うのは簡単だが、生活がかかっている人がいる。効率性と環境破壊、雇用創出と生態系の損失——パーム油は「どちらかを選べ」とは言えない問題の典型だ。

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