ジャカルタの水問題——洪水と地盤沈下が同時に起きる都市の矛盾
ジャカルタでは毎年洪水が起き、同時に地盤沈下で市の一部が海面下に沈んでいる。水が多すぎる問題と、飲料水が少ない問題が同時に起きている都市の構造を解説する。
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ジャカルタはアジア最速で沈んでいる都市のひとつだ。北部の一部地域は過去30年で1〜4mも地盤が沈下した。同時に、雨季には街が洪水に沈む。水が多すぎて沈む都市と、安全な飲料水が少ない都市が、同じ一つの場所に共存している。
地盤沈下のメカニズム
ジャカルタの地盤沈下の主因は「地下水の過剰汲み上げ」だ。パイプ水道網(PDAM)が市全体をカバーしていないため、住民・企業が地下水(深井戸)に頼ってきた。特に北ジャカルタは低地で地盤が軟弱であり、地下水を抜くと地盤が圧縮されて沈む。
ジャカルタ市内の年間地盤沈下速度は場所によって1〜25cm(研究機関によって測定値が異なる)。北ジャカルタの一部では現在の海面よりも低くなっている地点がある。これは建物を建てても、その重量でさらに沈む「負のスパイラル」だ。
インドネシア政府はこの問題を認識し、首都機能をカリマンタン島の「ヌサンタラ(Nusantara)」へ移転する計画を2024年から段階的に進めている。ただし政府機能の移転がジャカルタの人口・経済活動を即座に動かすわけではなく、水問題の根本的解決には長い時間がかかる見込みだ。
洪水:毎年来る「定期行事」
ジャカルタの雨季(10〜3月)は毎年洪水被害が発生する。2020年1月の洪水では66人が死亡し、数十万人が避難を余儀なくされた。2025年も周期的な洪水が報告されている。
洪水の原因は複合的だ。チリウン川など13本の川が市内を流れているが、上流の山岳部からの流量増加と、市内の排水能力の低さが重なる。違法建築、運河の生活ゴミによる詰まり、舗装面の拡大(雨水が地面に浸透しにくくなる)も要因だ。
在住外国人が住む場所のリスク
ジャカルタの中でも「洪水リスクが低いエリア」と「高いエリア」がある。
リスクが低い傾向:南ジャカルタ(スラバヤ、ポンドックインダ等の高台エリア)、チプタ地区などの高台。
リスクが高い傾向:北ジャカルタの低地エリア、チリウン川沿い。
居住前にそのエリアの洪水履歴をオーナー・エージェントに確認することは基本的な判断軸になる。「大雨の翌日に道が冠水するエリアかどうか」は不動産広告には書いていないことが多い。
飲料水の現状
ジャカルタでは水道水をそのまま飲むことは一般的でない。在住者のほとんどがガロン型ウォーターサーバー(ガロン水)を定期購読するか、ミネラルウォーターのボトルを購入している。5ガロン(19リットル)のコンテナが20,000〜30,000IDR(約190〜285円)程度で配達されるサービスが普及している。
浄水フィルターを取り付ける選択肢もあるが、配管の状態や水源の問題から、フィルターだけでは不十分なケースもある。日本人向け住宅・サービスアパートメントにはウォーターサーバーが標準設置されていることが多い。
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